磁性絶縁膜中のストレスとスピン波の関係を解明――超低消費電力なスピン波集積回路実現に貢献

豊橋技術科学大学とマサチューセッツ工科大学の共同研究チームは2018年6月7日、磁性絶縁膜中のストレスと磁石の波であるスピン波との関係を解明したと発表した。今回の成果により、実用化が期待されているスピン波演算素子を小型化できるという。

高集積化しても熱の発生が極めて抑えられることから注目を集めているスピン波集積回路だが、中でも磁性絶縁膜を伝わるスピン波はエネルギーの損失が小さく、長距離伝送が可能という利点がある。一方、磁性絶縁膜中でスピン波を伝えるには、磁性絶縁膜に比較的大きな永久磁石部品を付属する必要があり、スピン波集積回路の実現に向けた課題となっていた。

今回、共同研究チームは磁性絶縁体として有名な単結晶のイットリウム鉄ガーネット(Yttrium iron garnet、YIG)膜を複数の基板上に形成しスピン波を伝えることで、磁性絶縁膜中のストレスの大きさがスピン波に与える影響について調べた。この結果、大きなストレスがある条件下では付属する永久磁石が小さくてもスピン波が伝わることを明らかにした。

これまでのスピン波演算素子に関する研究では、膜中のストレスとスピン波の関係が不明だったため、場当たり的な研究/開発となっていた。しかし、今回の成果によりストレスを積極的に使った演算素子全体のデザインが可能となり、スピン波演算素子の動作に必要な永久磁石部品を従来の半分以下に小型化できるという。

その結果、スピン波集積回路全体を小型化できデバイスのチップ化も可能になるため、今後はチップ化したスピン波集積回路のデモンストレーションを目指すとしている。

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