ミシガン大、リサイクル不能だった塩化ビニルのリサイクル方法を考案

ミシガン大学の研究チームは、これまでリサイクルが困難だったポリ塩化ビニル(PVC:PolyVinyl Chloride)を、化学的にリサイクルする方法を開発した。研究成果は、『Nature Chemistry』誌に2022年11月14日付で公開されている。

ポリ塩化ビニルは、病院設備や医療機器、住宅設備、配管、衣料品、包装資材など、さまざまな製品に使用されている汎用性の高い材料であり、プラスチックの中では生産量は3番目に多い。

一方で、ポリ塩化ビニルはリサイクルが難しいことでも知られている。アメリカにおけるポリ塩化ビニルのリサイクル率は、0%だ。ポリ塩化ビニルに含まれている可塑剤は、加熱を必要とする一般的なリサイクル工程で簡単に溶出し、他の成分に混ざってしまう。多くの可塑剤は人体に有害で、可塑剤として広く使用されているフタル酸エステル類は、甲状腺ホルモンや成長ホルモン、生殖ホルモンに悪影響を与えることが知られている。またポリ塩化ビニルは加熱により塩酸を急速に放出する性質があるため、設備が腐食したり労働者が化学的火傷を負ったりする可能性がある。

そこで研究チームは熱を使わずに、電気化学的な手法でポリ塩化ビニルをリサイクルする手法を考案した。電気化学的な手法を研究する過程で、これまでリサイクルを困難にしていたフタル酸エステルが、ポリ塩化ビニルのリサイクル反応の効率を高める働きをするが明らかとなった。

また塩酸が放出される問題については、反応系への電子の導入により、生成速度を制御することで対処している。ポリ塩化ビニルは単結合した炭素骨格に水素と塩素が結合したポリマーだ。熱で活性化されると炭素は二重結合を形成し、同時に塩酸が急速に放出される。研究チームが開発した手法では、電気化学的に電子を導入して反応系を負に帯電すると、炭素と塩素の結合が切断され、塩化物イオンを生成する。この手法でも塩酸は生成されるが、電子を導入する速度を変化させることで、塩酸の生成速度を制御できるのだ。

塩化物イオンは、アレーンと呼ばれる医薬や農薬の成分となる低分子を塩素化する際に使用されるため、副産物である塩化物イオンを他の化学反応の試薬として再利用することが可能だ。

今回開発した手法は、これまでポリ塩化ビニルのリサイクルを困難にしていた可塑剤を効果的に利用する方法であり、副産物である塩化物イオンの再利用も可能にする。現在研究チームは、リサイクル工程のさらなる効率化や他の副産物の利用法の探索を試みている。

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