- 2018-6-29
- 技術ニュース, 電気・電子系
- カーボンナノチューブ, テラヘルツ検査チップ, テラヘルツ波, 東京工業大学, 理化学研究所, 産業技術総合研究所, 産総研
東京工業大学、理化学研究所、産業技術総合研究所(産総研)らは2018年6月28日、カーボンナノチューブ膜を材料としたウェアラブルなテラヘルツ検査デバイスを開発したと発表した。大規模な測定系を必要とせずに、指先につけるだけで配管の亀裂検査などの非破壊検査が可能になる。
周波数100GHzから10THz程度の領域に位置する電磁波「テラヘルツ帯」を活用した検査技術は、製品の内部にわたる形状/材質といった情報を非破壊で測定できる手段として注目を集めており、実用化に向けた研究開発が盛んになっている。しかし、二次元平面的な構造を持つ一般的なカメラを使用する場合、測定対象を全方位にわたって検査するには、カメラあるいは測定対象を360度機械的に回転させる機構が必要となる。そのため測定系の大規模/煩雑化や測定時間の増加、測定対象の制限といった課題があった。
東京工業大学の河野行雄准教授らは、2016年にカーボンナノチューブ膜の光熱起電力効果を用いたフレキシブルなテラヘルツ帯撮像デバイスを開発し、注射器などの医療器具の全方位非破壊検査を達成していた。今回、テラヘルツ光の検出原理である光熱起電力効果を高めるため、カーボンナノチューブ膜の吸収率や熱電性能を最適化し、高感度検出かつ折り曲げ可能な検出器を実現した。
開発した検査デバイスは大規模な測定系を必要としないため、従来の検査技術では難しいとされた入り組んだ工場内の配管設備などでも、デバイスを測定箇所に潜り込ませるだけで全方位非破壊検査ができる。任意の場所で検査できるため、訪問医療など移動先での即時検査などへの応用も期待できる。今後は検出器のさらなる多素子化、微弱信号の高感度読み出し回路や無線通信との結合などを行っていくという。