2次元結晶スイッチング素子の高性能化を促進する新理論を発見

横型および縦型の2次元結晶ショットキー・ダイオードの模式図。電流と温度の関係は、横型については2/3の、縦型については1のスケーリング指数によって、普遍的に記述できる。

シンガポール工科デザイン大学(SUTD)の研究チームが、2次元結晶を用いたショットキーバリアダイオード(SBD)における、電流と温度の関係を決定する普遍的スケーリング則(Universal Scaling Law)を解明した。これまでのSBD類型ごとに提案されていた理論モデルに替えて、全類型に対して普遍的に適用できる新理論であり、2次元SBDの高性能化を促進すると期待される。研究成果は、2018年8月1日の『Physical Review Letters』誌に公開されている。

SBDは、半導体と金属の接合により生じる「ショットキー障壁」と呼ばれる特性を利用したダイオード。単純な構造だが、高速なスイッチング特性を持つことから電源回路などに広く用いられている。また2次元結晶を用いたSBDは、従来のSBDには無いユニークな特徴があることから、近年大きな注目を集めている。しかしながら、2次元SBDの特性には、2次元結晶の物理特性と基本的に矛盾するなど多くの不思議な点があり、普遍的な理論が構築されていなかったという。

今回SUTDの研究チームは、横型や縦型など、様々な構造を持つ2次元SBDにおいて、最も基本的な電流と温度の関係を、統一的に記述できる普遍的スケーリング則を特定した。古典的ダイオードに用いられてきた、スケーリング指数β=2に替えて、横型SBDについてはβ=2/3を、縦型SBDについてはβ=1のスケーリング指数を採用することにより、全てのSBDについて電流と温度の関係を普遍的に記述できるとする発見だ。

普遍的スケーリング則は、半導体、超伝導、流体力学など様々な物理学の理論として登場し、物理システムの内部作用の実用的な解析を可能にするものだ。今回研究チームにより見出された2次元SBDに関する普遍的スケーリング則は、電流値が温度とともに変化する挙動を記述するとともに、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などを含む、広範囲の2次元系にも広く適用できるという。「新理論は、固体物理学において大きな影響をもたらす」と、研究チームの指導者であるLay Kee Ang教授。そして「過去60年間に渡って広く用いられてきたダイオードの古典的理論式に代わり、2次元結晶エレクトロニクスの設計を向上する革新的な原理を提供できる」と、その成果を説明している。

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Universal Scaling Laws in Schottky Heterostructures Based on Two-Dimensional Materials

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