- 2019-1-21
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- 2Dシート, Anna C. Balazs, Science Advances, ピッツバーグ大学, マイクロ流体デバイス, 学術, 米国科学振興協会(AAAS)
ピッツバーグ大学の研究チームが、反応性流体で満たされているマイクロチャンバー内で、触媒反応を利用することにより、自律的に移動し形状変化する2Dシートを設計した。まるでディズニー映画「アラジン」に出てくる「空飛ぶ魔法の絨毯」のように、飛ぶだけでなく、物を包んだり羽ばたいたり這い回ったりできる。次世代型の柔らかい分子ロボットとして、マイクロ流体デバイスを創成する上で重要な技術になると期待されている。研究成果は、米国科学振興協会(AAAS)の『Science Advances』誌に、2018年12月21日に公開されている。
研究チームのAnna C. Balazs化学石油工学科教授は、「一定環境下で自律的に移動し、その形状を変化させて他の物体を捕える生物のような材料を創成することは、長年の課題だった」と説明する。「表面に化学的に活性な修飾を施すことで、液体の流れを発生させる研究がある。我々もマイクロ流体チャンバー内で自律的に運動できる粒子を設計してきた。今回、触媒反応を通じてマイクロ流体中に流れを発生させ、他の物体を輸送したり、自らの形状を変化させることができる、自律的な統合システムを設計した。」
具体的には、毛髪程の薄さの柔軟な2Dシートに、自然界に広く存在する酵素カタラーゼなどの触媒で被覆したシステムとした。チャンバー内の流体に反応性物質を加えると、自律的な推進や輸送、形状変化などを誘起できる。更に、シートの各位置を異なった触媒で被覆し、流体中の反応物質の量と種類を制御することで、触媒反応の連鎖を意図的に起こすこともできるという。
研究チームによると、触媒特性を個別にプログラム設計した4枚の花弁のような形状のシートでは、花弁開閉のロジック動作を行うゲートを創成することができた。これは野球のミットのように、花弁を使ってミクロなボールを取込み、一定時間保持した後、新たな化学反応の誘起によりボールをリリースできるものだ。また、触媒をシート端部ではなく中央部に配置することにより、尺取り虫の運動に似た這い回る動きを誘起させた。シートの前方に障害物を置き、シートがその障害物を乗り超えて移動を継続し、でこぼこの表面上も移動できることも実証した。
「次は複数のシート間の相互作用および自己組織化を活用し、複雑で連携した機能を実行できるアーキテクチャの設計、そして熱や光などの刺激や環境変化に対応して形状や行動を適応させる3Dマイクロマシンの設計だ」と、Balazs教授は今後の目標を語っている。