- 2019-1-24
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物質・材料研究機構(NIMS)は2019年1月23日、東京大学、新潟大学、理化学研究所と共同で、機械学習と熱放射物性計算を組み合わせることで、極めて狭い帯域の熱放射メタマテリアルを最適設計し、実験にて実証することに成功したと発表した。これにより、高効率なエネルギーデバイスの開発が期待できるという。
物体が熱を電磁波として放出する熱放射現象は、波長制御ヒーターや赤外線センサー、熱光起電力発電などのエネルギーデバイスで応用されている。熱放射エネルギーを無駄なく利用するためには、有用かつ狭い波長帯での熱放射スペクトルを持つ材料が必要となる。その材料として、これまでは、人工的に作られた物質であるメタマテリアルが研究されてきたが、経験に頼らずに最適なメタマテリアルを設計することは困難だった。
そこで、研究グループは、機械学習と熱放射物性計算を組み合わせたメタマテリアル構造の設計手法を考案。熱放射の大幅な狭帯域化と熱放射性能の最大化に成功した。具体的には、熱放射物性計算とベイズ最適化を用いて機械学習を交互に実施。候補構造から熱放射性能が最大になるメタマテリアル構造を高い最適化効率で決定する。
そして実際に、3種類の物質を18層重ねて配置する多層膜構造にこの手法を適用。約80億通りにも上る候補構造の中から、半導体材料と誘電体が非周期的に並ぶような非直感的なナノ構造を導出した。さらに、このメタマテリアル構造を実際に作製したところ、Q値200に迫る極めて狭帯域な熱放射が実現できていることが確認できた。
今回開発した手法は、計算による評価さえできれば、どのような物性に対しても適用できるという。そのため、膨大に存在する材料やナノ構造の選択により、他分野のナノ構造の最適化にも幅広く貢献できるとしている。