極薄高性能有機半導体単結晶膜からRFID用集積回路を開発――超安価なフィルムデバイスの大量供給が可能に 東大とパイクリスタル

(左)厚さ16μmのフレキシブル基板上に作製された有機集積回路。(右)ID の読み出しを行う 6 ビットカウンター

東京大学と同大学発のベンチャー企業であるパイクリスタルは2019年1月30日、有機半導体単結晶膜をタダ同然の値段で形成し、この単結晶膜からRFID用集積回路を開発したと発表した。

RFIDタグやトリリオンセンサーなど、IoT社会の発展には、データを処理して無線伝送する超安価なデバイスの大量供給が必要とされる。しかし、シリコン半導体と比べて低コスト化に有利であるとされてきた有機半導体についても、高純度化にコストがかかり、材料利用効率も悪かった。

この状況の中、研究グループは2018年、分子2層分程度の厚さしかない極薄単結晶膜から高性能のp型有機半導体トランジスタを実現した。そして、今回、同様の方法でn型単結晶有機半導体トランジスタを作製し、積層構造によって集積化する技術を確立。さらに、厚さ16μmのフレキシブル基板上に有機半導体回路を印刷手法を用いて集積化することに成功した。

製造した有機集積回路の光学顕微鏡写真

特に、RFIDなどに必須の個体認識シグナルを形成するデジタル回路を、1cm2程度の大きさのフィルム上に構成した。このシステムは6ビットカウンターなどを含む1000トランジスタ程度から成り、32ビットすなわち40億個のIDを識別できるという。

(左)設計した6ビットカウンターの動作原理。(右)計測されたROMの読み出し結果。

設計した回路図。6ビット同期カウンターは約500個の有機トランジスタから構成される。ROMは約400個の有機トランジスタから構成される。

また、その薄さから、材料利用効率が極めて高く、単結晶膜も自己組織化によって簡単に形成できる。そのため、面積当たりのコストはシリコンの1000分の1程度となり、他の材料と比べてタダ同然の半導体だという。

今後は、集積回路の規模向上とさらなる低コスト化を目指すという。また、今回の成果は、1月30日~2月1日に東京ビッグサイトで開催される「J-FLEX」で実デバイスの展示とともに発表し、3月には「第66回応用物理学会春季学術講演会」でも講演する予定だ。

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