大阪大学は2019年3月15日、バーチャル位相グレーティングの最適化によって、コスト増なしでレーザー光のビーム形状の精度を向上させる技術を開発したと発表した。
レーザー光のビーム形状は、その能力や効果を発揮するための重要な要素だ。特に高品質なフラットトップ矩形ビームは、均質なレーザー加工や医療分野、超高強度レーザー応用(加速器、核融合)などのさまざまな領域にニーズがある。
ビーム整形には静的な手法として、屈折率分布を用いる手法やマイクロレンズアレー、DOE(Diffractive Optical Element)など、入力ビームを望む形状に分配する方法がある。しかしこれらの方法は、ビーム整形精度が低かったり、整形後に波面が無秩序になるという課題があった。
一方、動的な整形手法として、空間光変調器(SLM)による位相グレーティング(周期的な位相分布を持つグレーティング(回折格子))と4f光学系におけるフーリエ面での空間周波数フィルタリングと像再生を行う手法が開発された。これは位相グレーティングの回析効率を空間的に制御することで、矩形フラットトップビームを整形する方法で、波面を乱さずに制御できる特徴がある。しかし、抽出成分のフーリエ変換像と除去成分が重複するために、抽出成分の高周波成分をカットする必要性から、ビーム整形精度が悪化するという課題があった。
今回開発した手法は、バーチャルな斜め位相グレーティングを用いて、従来平行であった、グレーティングベクトルkgと矩形フラットトップビームの辺ベクトルkxkyを非平行にすることで、抽出成分と除去成分をフーリエ面において空間的に完全分離して重複を除去。高周波成分を含んだ抽出成分のみを効率的に取り出すことで、高精度なビーム整形を可能にした。
これにより、リップルのない均一な強度分布を持つフラットトップ矩形ビームの整形に成功し、ビーム形状のエッジ立ち上がりが従来の5分の1の20μmを達成した。
今回の開発により、ビーム形状を高精度に最適化することができ、レーザーを用いる基礎研究や製造/医療技術などの広い範囲に貢献できるという。また、すでに同種のビーム整形を利用している装置では、SLMに表示する位相グレーティングとフィルターを変更するだけで、追加コストなしでビーム整形の精度を向上させることができる。