米Wilson、3Dプリント製のバスケットボールを開発――空気で膨らませる必要がなく、従来のボールのような弾性も再現

Wilson Basketball/YouTube

米プロバスケットボールリーグNBAなどの公式球サプライヤーである米Wilson Sporting Goods Company(以下、Wilson)は、空気で膨らませる必要がない3Dプリント製バスケットボール「Airless Prototype」を開発し、2023年2月19日付でそのメイキング動画を同社の公式YouTubeチャンネルで公開した。

Airless Prototypeは、3Dプリンターで作られたボールで、空気を入れて膨らませる必要がない。研究グレードの材料で造形しており、その見た目は穴だらけでありながら従来のバスケットボールのような弾みを再現している。

Wilsonのバスケットボール研究開発マネージャーであるNadine Lippa博士は、アディティブ・マニュファクチャリング(AM)技術によって、アスリートの体験や、バスケットボールの製造方法などを完全に変えることができると考えた。そして、工業デザインを取り入れていくつかの設計を考え出し、バスケットボールのような形状かつ感触でありつつ、バスケットボールのように機能するものを作り上げていった。

Wilsonは、米General Latticeと共同で3D構造の設計をし、3Dプリンターで扱いやすいデジタルファイルに変換。EOSがそのファイルを用いて粉末樹脂3Dプリンター「EOS P 396」で作製した。EOSは産業用3Dプリンティング技術による製造ソリューションを提供する会社であり、従来、航空宇宙企業、自動車企業、医療機器企業と仕事をしてきた。

Airless Prototypeは、粉末焼結積層造形(SLS:Selective Laser Sintering)方式で作製された。敷き詰められた粉末状のポリマー材料にレーザーを照射して、2次元パターンを粉末床に「エッチング」し、レイヤーごとに焼結。それを繰り返していくと立体的なボール状の粉体ができあがる。こうして造形された粉体を取り出してスムージング技術による後処理をした後で、染色処理をして黒く染めた。

ボールの表面は小さな六角形の穴がたくさん開いており、空気が自由に通り抜けられるようになっている。このボールは、従来のバスケットボールのような8枚合わせパネルのように見える部分と、おなじみの継ぎ目がある構造が特徴的で、バスケットボールをプレーできるよう設計されているが、これまでに誰も見たことがないボールだ。こうして作製されたプロトタイプはNBAの試験施設に送られ、厳しいテストが実施される。

Airless Prototypeはまだ開発途中であり、世界中のバスケットボールコートで使えるようになるには、まだやるべきことがあるという。しかし、このAirless Prototypeは、他のスポーツや将来のWilson製品、そしてAM技術による革新的な持続可能性など、多くの可能性を示すものだとしている。

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