腐食しないプレキャストPC床版「CFCCスラブ」の実用化に成功――炭素繊維複合材ケーブルを使用し、塩害に耐性 東京製綱など

東京製綱インターナショナルとオリエンタル白石は2019年4月9日、共同開発している炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)を使用したプレキャストPC床版「CFCCスラブ」が疲労耐久性を確認する輪荷重走行疲労試験を終了、構造性能に関する試験をすべて完了し、実橋への適用段階となったと発表した。

近年、鋼橋での床版の新設・更新工事では工期短縮や耐久性向上、生産性向上のため、プレキャストPC床版の採用が増加している。CFCCスラブは、腐食しない構造材料である炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)を緊張材として使用し、床版支間方向と橋軸方向の2方向にプレストレスを導入したプレキャストPC床版だ。

両社はさらに、短繊維補強コンクリートを採用することで緊張材以外の補強材を削減、コスト縮減を図った。CFCCは腐食しない材料のため、塩害環境でのかぶり厚の増加は必要ない。CFCCスラブは道路橋示方書に規定される塩害に対する耐久性確保の「方法3(劣化の影響がないとみなせる材料の使用)」に相当する。

加えて、従来は連続繊維の緊張材を用いる場合もポストテンション方式の定着部は金属製だったが、CFCCスラブでは完成時に金属を残さない定着構造を採用している。耐久性確保の確実性やLCC(ライフサイクルコスト)の低減の観点から、海岸付近や凍結防止剤が散布される地域などの厳しい塩害環境下での活用が期待される。

また、CFCCスラブが短繊維補強コンクリートの使用により鉄筋に相当する補強材を削減したが、曲げ破壊性状(耐力、じん性)や押抜きせん断耐力はPC鋼材と鉄筋を用いた2方向PC床版と同等であることを実験で確認した。また、輪荷重走行疲労試験において、耐用年数100年に相当する指標値の約300倍まで載荷しても、破壊されないことを確認した。

この他にも、同一床版厚では約6%の重量減になることや、劣化因子の浸透が懸念される合成桁のずれ止め用孔や排水桝近傍への緊張材の配置が可能であることなどの利点がある。さらに床版更新工事では、一般的な1方向PC床版と比較して、床版部の取替え工程を15%程度短縮可能だ。一方、1方向PC床版に比べ、全体工事費では13~22%程度増加(塩害対策地域・橋長240mでの比較)する。

今後両社は、日本と同様にインフラの老朽化が問題となっている米国などの海外への展開も視野に入れ、技術のブラッシュアップとコストの縮減に取り組む。

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