- 2019-4-19
- 化学・素材系, 技術ニュース
- セルロースナノファイバー, 大阪大学, 研究
大阪大学は2019年4月17日、同大学の研究グループがセルロースの基礎的な光学制御性能である「固有複屈折」を解明したと発表した。
木材などから得られるセルロースナノファイバーは、成膜すると柔軟で高強度かつ低熱膨張性の「透明な紙」になることが知られ、フレキシブルディスプレイの透明基材など光学用途への応用が期待されている。しかし、セルロースの固有複屈折については明確でなく、位相差を制御する本格的な光学部材としての活用におけるボトルネックになっていた。
これまで、セルロースの固有複屈折値は実験や計算から予測されていたが、用いるセルロース試料や導出方法によって値が大きく異なり、具体的には解明されていなかった。今回、研究グループは改めてこれまでの課題点を整理し、最適な試料と測定手法を精査適用した。その結果、セルロースの固有複屈折が従来予想値のみならず多くのプラスチック類よりも高いことを見出した。
さらに研究チームは、今回の研究で開発した配向性ナノファイバーフィルムが、光学特性と伝熱性を同時制御できることを見出した。従来のプラスチックフィルムやガラス基板にはない「複合機能フィルム」として薄型化と排熱に同時に寄与することから、光学デバイスの高機能化が期待できるという。
今回の成果により、フレキシブル電子デバイスの透明基材として用いられるセルロースナノファイバー製の「ナノペーパー」に位相差制御性を付与し、「光を制御する紙」として本格的な光学用途への活用が期待できるという。また固有複屈折が判明したことにより、これまでX線回折法などの手法で配向性が求まらなかったセロファン膜やレーヨン繊維などの非晶性セルロース試料でも複屈折測定から精密な配向性が導出可能となるため、さまざまなセルロース素材の精密な工学応用が推進されるとしている。