グラフェン内で液体のように動き続ける電子――低電力デバイスの開発につながる挙動を解明

レンセラー工科大学(RPI)とインドのQuazar Technologiesの研究チームは、グラフェンへAC電圧を印加した場合に発生する電流の挙動を、シミュレーションによって示した。電圧の印加を止めても電流が流れるため、高速に動作する低電力デバイスの開発が期待される。研究成果は、2019年4月15日付けの『Physical Review B』に掲載されている。

グラフェンは、炭素原子が蜂の巣のように六角形に結びついた単一の原子層で、独特な電子的特性を持つことから、シリコンを上回るデバイス材料として大きな注目を集めている。最近の研究では、グラフェン内の電子は、ある条件下においては液体のように流れることができるといわれている。

RPIのRavishankar Sundararaman助教授は、グラフェン内の電流をビンに入った水の動きに見立てて、この現象を分かりやすく説明している。

まず、ビンの底に水を数滴並べてみる。ビンを左右へゆっくり振って傾けたときの水の動きは、予測可能だ。電子が材料中で原子と接触して跳ね返るときの動きも同様に予測できる。電流は印加電圧に比例し、それはオームの法則として知られている。この場合、印加を止めれば、電流も止まる。

次に、ビンの半分まで水を入れてみる。ビンを強く振ったときの水の動きは、ばらばらで予測が難しい。なぜなら水分子は、ビンの壁だけではなく水分子同士もぶつかりあって、跳ねたり渦を巻いたりするからだ。ビンの動きを止めても、すぐには水の動きは止まらない。電子の場合は、印加を止めても電流が流れ続けるという状態だ。このとき、オームの法則には従っていない。Sundararaman助教授らは、この現象をグラフェン内で再現する方法を考案した。

研究チームのシミュレーションでは、ビンを振る代わりに、電圧を振動させた。10GHzのAC電圧をグラフェンに印加した計算の結果、生成した渦や電子の流体力学的な挙動をより正確に判別し、時間ごとの推移も求めることができた。

「この結果から、電子の奇妙で有益的な特性を得ることができる。電子は液体のような振る舞いをするので、運動量を保存して流れ続けることができる。エネルギー損失を抑えた伝導が可能なため、高速で動作する低電力デバイスの開発において非常に役立つだろう」と、Sundararaman助教授は語る。

具体的にデバイスを作製してエレクトロニクスに応用するには、さらに多くの研究が必要だとしている。しかし、今回の発表は、グラフェンをはじめとする材料中の電子の流体力学的挙動の正確な観測を可能にするだろう。

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New Method Proposed for Studying Hydrodynamic Behavior of Electrons in Graphene

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