- 2019-6-20
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北海道大学は2019年6月19日、小さな電場で分極反転可能で、柔らかくて押すと伸びて拡がる新しい「柔粘性/強誘電性結晶」を開発したと発表した。
強誘電体は、自発的な電気分極を持ち、ある大きさを超えた電場がかかると分極の向きが反転する物質だ。特に、無機酸化物のセラミクス強誘電体は、コンデンサー、不揮発性メモリ、赤外線センサー、圧電素子などの材料として幅広く利用されている。しかし、セラミクス強誘電体は有毒な鉛を含むことが多いという問題があった。また、無毒な分子性結晶の強誘電体も注目されていたが、単結晶でしか強誘電体として機能しないという課題があった。
そこで、研究グループは2016年7月、高温で柔粘性結晶相となり、室温で強誘電性を示す柔粘性/強誘電性結晶を開発。強誘電性分子結晶の欠点の克服に成功した。しかしこの結晶は、室温では分極反転に必要な電場が大きいという課題があった。
そして今回、この柔粘性/強誘電性結晶を改良し、小さな電場で分極反転可能で、高い加工性をもつ新しい柔粘性/強誘電性結晶を開発した。この新しい結晶は、強誘電体の分極方向を3次元的にほぼ自由に変更でき、粉末を固めた材料でも強誘電体として機能する。溶液加工も容易な上、粉末を加圧することで透明な強誘電性フィルムやディスクも作製できるという。さらに、温度変化で分極の大きさが変化する焦電体としての性能が高く、人体検知に使われている赤外線センサーとして応用可能だ。
研究グループは今後、この結晶の多彩な機能とユニークな加工性により、フレキシブルなエレクトロニクスデバイス素子など、様々な用途での活用が期待できるとしている。