ゴム風船を使って曲線的な電子機器を作る――生体モニタリングが可能なコンタクトレンズも

Credit: C. Yu et al./Nat. Electron.

レンズや太陽電池などのように立体曲面の電子機器を製造するため、CASプリンティング(conformal additive stamp printing)と呼ばれる新しい製造方法が開発された。ヒューストン大学のCunjiang Yu氏らの研究チームによるもので、2019年9月23日に『Nature Electronics』に掲載され、『Nature』にも取り上げられている。

近年、スマートコンタクトレンズや撮像素子、電子アンテナ、半球形太陽電池など、立体的な曲面形状を必要とする電子デバイスが求められている。その主なサイズは数mmから数cmと小さく、数μm以内という高い精度が求められることが多い。

ところが、微細加工を含む既存の製造技術は、本来平面的な電子デバイス向けに設計されており、3次元曲面の電子機器をうまく製造することができないという課題がある。研究チームは多くの既存技術をテストしたが、どの手法にも限界があり、3次元曲面構造を効率的に製造する手法を見つけることはできなかった。

そこで研究チームは、新しい製造方法であるCASプリンティングを提案した。CASプリンティングでは、まず2D形状のシリコン回路を作成する。次に、ゴム風船を膨らませて、それを市販のウレタンゴムでコーティングする。これを先ほどの回路に押し当てることで、2Dでデザインされた回路が等角(conformal)的に3D曲面である風船上に移される。その後、3D造形されたシリコン製のドームに風船を押し付けると、回路がドーム上に転写されるというものだ。

この手法を実証するために、論文では、広角カメラ用のコンベックス型光センサーアレイ、平面型よりも受光範囲が広い半球形太陽電池、そして涙液中の乳酸塩レベルを測定できるコンタクトレンズを試作した。その他にも、シリコンペレット、小型アンテナなど、さまざまな曲線的なデザインのデバイスを製作した。

この新しい手法によって、ウェアラブルから光電子工学、遠距離通信、生物医学の応用まで、さまざまな曲がった電子デバイスを効率的に生産できるようになると期待される。

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