東京工業大学は2019年10月17日、近畿大学と豊田工業大学と共同で、鉛とチタンからなる酸フッ化物が太陽光照射下で水を分解する光電極として機能することを発見したと発表した。
太陽光に多く含まれる可視光を利用して水を水素と酸素に分解する光電極は、半世紀以上も前から国内外で精力的に研究されている。光電極に用いられるn型半導体には、(1)可視光を吸収できる小さなバンドギャップ(2)水分解に際して追加で必要となる電気エネルギーを最小にする高い伝導帯ポテンシャル(3)水の酸化に対して安定な価電子帯構造、という要素が求められるが、これら全てを満たすn型半導体材料はほとんど知られていなかった。
東京工業大学の前田准教授らはこれまでに、酸フッ化物Pb2Ti2O5.4F1.2(鉛・チタン・酸素・フッ素)が可視光応答可能な狭いバンドギャップと高い伝導帯ポテンシャルを有するn型半導体であり、安定な可視光応答型光触媒となることを見出していたが、水中での反応活性の向上が課題となっていた。特にこの材料の高効率化には、光吸収によって生じた電子と正孔を効率良く水へと受け渡せる反応場の構築が必要となっていた。
今回、研究チームは透明導電性ガラス上に積層したPb2Ti2O5.4F1.2微粒子電極が、太陽光照射下で水を分解する安定な光電極となることを見出した。これは、酸フッ化物を光電極として用いて水を分解した世界初の例ともなる。長時間の光照射に対しても自身の分解などを伴うことなく水を酸化して酸素を発生できる上、今後は光電極構造や電解条件の最適化を行うことで、さらなる性能向上が見込めるという。また、Pb2Ti2O5.4F1.2は水分解水素製造だけでなく、二酸化炭素還元のための光電極部材としての応用も期待できるとしている。