- 2019-10-25
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多光子状態を生成する新たな手法が開発された。この研究は、ルイジアナ州立大学物理学および天文学科のOmar Magaña-Loaiza助教らが、コロラド州ボルダーのアメリカ国立標準技術研究所や、メキシコとドイツの研究所および大学と共に行ったもので、2019年9月27日、『Nature’s NPJ Quantum Information』に掲載された。
工学的な目的のため、光を量子レベル制御するのは依然として難しい。しかし、もし光子のゆらぎとそれに伴うノイズを制御できれば、より正確な測定が可能になる。
現在、光の量子特性を実用目的として、大きなスケールで保存する技術の開発が競われている。これまでのところ、単一光子あるいは1つの光子対の量子特性の制御が可能で、量子もつれとヘラルド光子(herald:一方の光子の検出によってその存在が分かる光子)による、様々な応用が知られている。
従来は複数光源を用いて多光子状態を生成していたが、同研究チームは、もつれレーザー光と類似性を共有する多光子パケットを生成する単一光源を構築することができた。これは重要な技術的成果と言える。
最大のポイントは、単一のセットアップで操作可能な量子状態を持つ、複数の種類の光を生成できることだという。また、単一の光子を生成することに加えて、概ねポワソン分布に従うレーザー光と自然光(すなわち太陽光)を生成することもできる。
今回研究チームは、この特性を保持した光子をグループとして、つまり多光子状態を生成する方法を明らかにした。いくつかの光子を差し引くことで波束の形状を変え、その中に含まれる光子の数を人為的に増やすことができる」とMagaña-Loaiza助教は説明する。
研究チームが発表した論文では、このような光子を差し引いた2モードスクイーズド真空状態(TMSVS:Two-Mode Squeezed Vacuum States)により、光子数が最大10光子の多光子状態で、電磁気的な量子ゆらぎを制御できることが実証できたとし、これまでとは根本的に異なるレベルでの量子状態を制御する実験的実証とされている。
これは、量子操作と光の制御における注目すべき一歩だとMagaña-Loaiza助教授。「この根本的なレベルで光を操作できれば、光の工業的な利用が可能になる」と述べている。将来的に画像処理やシミュレーション、計測、計算、通信、暗号法といった分野において、大規模な量子技術の応用につながると期待される。