全固体リチウム電池を応用した情報メモリー素子を開発――超低消費エネルギー化と多値記録化に初めて成功 東工大ら

東京工業大学は2019年11月21日、東京大学と共同で、全固体リチウム電池と類似した薄膜積層構造を持ち、超低消費エネルギーと多値記録を特徴とするメモリー素子の開発に成功したと発表した。

コンピューターの利用拡大とともにエネルギー消費量は増大し続けており、半導体素子の消費エネルギー低減が求められている。このような状況において研究グループは、全固体リチウム電池の構造と動作メカニズムに注目し、情報を電圧として記憶する低消費エネルギーの電圧記録型メモリー素子の開発に取り組んだ。この素子は、電池における充電状態と放電状態をメモリーの「1」と「0」に対応させるもので、開放端電圧(回路を電流が流れていない時の2電極間の電位差)が変化するメモリー素子と考えることができる。

通常の電池応用では電池容量を大きくすることが求められるが、メモリー素子への応用を考える場合には、電池容量が小さいほど消費エネルギーが小さくなり、優れたメモリー素子となる。電池容量は正極材料によって決まるため、低消費エネルギー化を実現するには、正極材料として適切な材料を選択する必要がある。今回の研究では、半導体素子作製技術として汎用的なスパッタリング法などの薄膜作製手法を活用した。また、電池容量を実現するための正極材料としてニッケルを電極として用い、全固体リチウム電池と同じ構造のメモリー素子を作製した。

その結果、現行のパソコンに使用されているDRAMの1/50程度という消費エネルギーの低減に加えて、3種類の異なる電圧状態を記憶する3値記録メモリーとしての動作を実現した。これらの特徴は、界面に自発的に生成した極薄の酸化ニッケル膜とリチウムイオンの多段階反応によるものであり、この成果は、超低消費エネルギーメモリー素子の実用化に向けた重要な指針となるだけでなく、固体内におけるリチウムイオン移動についての理論構築にもつながるとしている。

今後は電池容量を究極に小さくした電池を作製することにより、電圧記録型メモリー素子のさらなる低消費エネルギー化が可能になるという。さらに人工知能技術のさらなる発展に向け、人間の脳の動きを模倣した脳型コンピューターへの応用も期待できるとしている。

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