燃料電池とは何か?簡単に仕組みやメリットを解説

燃料電池とは?

燃料電池とは、水素と酸素を化学反応させることで発電する装置です。電池という名称から、蓄電池などと同じような働きをするものだと考えるかもしれませんが、蓄電池は充電した電気を貯めておくだけの装置で、発電する能力がない点が燃料電池と異なります。燃料電池は、外見は小さいものの発電する能力があり、小さな発電所と表現できる装置なのです。

燃料電池は、子供向けの書籍や中学校の理科などでも扱われる水素と酸素を使った「電気分解」とは反対の化学反応を応用するもので、極めて分かりやすいものとなっています。このような燃料電池が普及することで、電気自動車を始めとした便利な機器が実用化されています。これからさらに普及することが期待されていますので、その内容を理解しておくようにしましょう。

燃料電池開発の歴史

日本での燃料電池の開発は、1974年から始まる国家プロジェクトのサンシャイン計画や、その後のムーンライト計画、ニューサンシャイン計画において、大いに注目されることになりました。これらのプロジェクトでは、燃料電池、水素製造システムや安全な輸送・貯蔵システムの開発が行われました。燃料電池の具体的な用途としては、燃料電池自動車と定置用燃料電池が想定されています。

定置用燃料電池で家庭用のものが、現在も使われている「エネファーム」です。エネファームは国内で最も使用されている燃料電池ですが、全国の家庭で問題なく動作できるようにと、2005年に大規模な実証実験が行われた後に、2009年に一般発売が開始しました。長い年月をかけて誰もが使える装置として、燃料電池に関する技術が少しずつ確立されてきたのです。

燃料電池の仕組み

発電の仕組み

燃料電池に天然ガスやメタノールなどを使用して水素分子を供給すると、マイナスの電極で水素イオンと電子に分離します。分離した水素イオンは電解質層を経てプラスの電極に移動し、電子は外部で形成される回路を流れプラス電極に至ります。一方、外部から供給される酸素は、外部回路から流れてきた電子と反応して酸素イオンとなって、その後水素イオンと結合することで水となります。

このように、複雑に見える燃料電池の発電の仕組みも、水の電気分解の逆反応だと考えれば、理解しやすくなります。水の電気分解では、水を水素分子と酸素に分解しますが、燃料電池では水素分子と酸素から水を生成することになります。

燃料電池の基本的な構成

燃料電池は、「セル」と呼ばれる構成単位が集まったものです。セルは、多数の溝を持ったプラスの電極板とマイナスの電極板の間に、 固体高分子膜の電解質膜を挟み、一番外側にセパレーターを重ねた構造となっています。平たくなった各構成要素が、重なり合って燃料電池としての機能を実現しています。

そして、外部から酸素と水素が供給されることで、燃料電池内で化学反応が起こり、電気が発生するのです。燃料電池に必要となる酸素と水素については、酸素は空気中に20%含まれているので容易に入手できますし、水素は都市ガスが原料として使っている天然ガスを分解することで手軽に調達できます。

供給された水素が、水素イオンと電子に分離することが大きなポイントです。これによって、水素と酸素を用いた反応による化学エネルギーから電気エネルギーを作り出すことが可能となるのです。電解質膜中に移動した水素イオンは、酸素や外部回路を経由した電子と反応して水となります。

燃料電池のメリット

電気と熱が同時に利用可能

燃料電池は、発電する際に熱も発生しますので、電気だけではなく排熱も利用することが可能です。電気と熱を使うことで、よりエネルギー効率を高めることができます。資源を大切に使えるというメリットもあり、燃料電池が期待されているのです。

発電時に水しか排出しない

火力発電は二酸化炭素、原子力発電は放射性の廃棄物など、環境を汚染する物質を排出する発電方法が多いですが、燃料電池の場合は水しか排出しないため、地球の環境を守るのに役に立ちます。有害な物質を排出しない発電方法は、極めて貴重な技術です。

燃料を入手するのが容易

燃料電池の燃料となる酸素や水素は、簡単に手に入ります。酸素は空気から、水素は都市ガスやメタノールなどを利用すれば良いのです。特別な燃料を必要としないために、一般家庭においても、いつでも手軽に利用することができます。

騒音や振動が発生しない

モーターやタービンなどを使用せずに、化学反応だけで発電する燃料電池は、ほとんど騒音や振動が発生しません。そのため、都市部や住宅街に設置しても、問題なく発電を続けることが可能です。

送電ロスがない

発電所から電気を利用者に届けるまでに、5%の送電ロスが発生するとされています。しかし、燃料電池は使用する場所の直ぐ近くに設置されますから、送電ロスがありません。無駄を省くシステムとしても、優秀なものとなっています。

まとめ

燃料電池は、有害な物質を排出することがない地球に優しいエネルギーとして、世界中で注目を集めるエネルギーです。燃料も酸素と水素という手軽に入手できる素材なので、資源の少ない日本でも持続可能なエネルギー源として大きな期待が持たれています。今後は、さらなる技術革新によって、燃料電池の寿命を長くしたり、装置のコストを下げるなどすれば、普及する速度も加速されるでしょう。家庭でも、当たり前のように使う時代が目前に迫っています。

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