鳥は抗力を使って飛び立つ――これまでの常識に一石を投じる観察結果

Image credit: Diana Chin

動物や飛行機がどのように飛ぶかについて、鳥は抗力を使って離陸中に体重を支え、揚力を使って着陸時のブレーキとしていることが明らかになった。従来の理解と正反対ともいえるこの研究は、スタンフォード大学によるもので、2019年11月25日に『Nature Communications』に掲載された。

従来、抗力は物体を減速させる力であり、揚力は重力に対抗する力で、鳥や飛行機を上方に持ち上げるものと考えられていた。しかし今回の研究によると、鳥が離陸する際、抗力を利用して体重の半分までを支えており、逆に揚力は着陸直前にブレーキをかけるのを補助していることが分かった。

研究チームはまず、水平および垂直の力を測定するため、鳥の飛行経路の床、天井、前面、背面にセンサーパネルを設置。合計18のセンサーで、体重30グラムのインコによって生み出される微小な力を測定した。

加えて、毎秒1000フレーム撮影する5台の高速度カメラを使い、翼の動きを撮影した。画像による測定と、センサーによる測定を組み合わせることで、離陸と着陸時の揚力と抗力の大きさを決定することに成功した。

研究チームによる5羽のインコを使った研究では、インコがとまり木からとまり木まで80cmほどの距離を飛ぶ際に、止まり木を離れるときに翼を上昇する方向に傾けることで、揚力を前方への推進力に変え、抗力を上方に向けることで自重の半分ほどを保持させていることが分かった。

ただ、この発見は、現代の航空機のデザインを変えるようなものではないという。鳥が抗力を使って飛ぶことが分かったとしても、それが効率的という意味ではない。ただ、現代の航空力学の教科書には、こうした解釈は書かれていない。そのため、例えばプロトバードと呼ばれる鳥の古代の祖先にも、同様に抗力を生成できる翼があったが、こうした種は実際には飛べなかったとされてきた可能性はある。研究チームは今回の発見を「(抗力を上昇に使うことは)効率的ではないかもしれないが、鳥にとっては効果的なのだろう」と結論付けている。

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