超音波振動を使って数μmのマイクロプラスチックを回収する技術を開発

信州大学が、超音波を用いたマイクロプラスチックの回収法を提案し、洗濯排水に含まれるファイバー状のものも含めて濃縮回収できることを実証した。この成果は2019年11月10日、『Sensors & Actuators B: Chemical』誌のオンライン版に公開された。

ペットボトルやビニール袋など、比較的大きなプラスチックゴミに加え、近年数mm以下のプラスチック片(マイクロプラスチック)による環境汚染が注目されている。その実態解明が早急に求められているが、調査や分析のためのサンプリングにはメッシュサイズが約0.3mm(300μm)のプランクトン採取用ネットが主に用いられており、それ以下のマイクロプラスチックは回収も分析もできていないのが実態だ。

マイクロプラスチックの発生要因としては、主に環境中で紫外線や熱等で劣化したプラスチックゴミが物理的に破砕されてできると考えられている。加えて、洗濯排水に含まれる衣類の繊維から脱落した合成繊維くずも、マイクロプラスチックファイバーとして環境への影響が懸念されている。

こうしたマイクロプラスチックを効率的に回収する手段として、今回研究グループは「音響収束」に着目した。これは、微細な流路中で超音波を照射すると、音響因子がプラスとなる微小粒子を流路中央に集められるというものだ。

研究チームは、音響収束によってマイクロプラスチックを集積させるデバイスとして、微細な流路を備えたガラスに、超音波振動を起こすための圧電素子が貼り付け、1メガヘルツで振動させた。この場合水中での1波長が1500μmとなるため、定在波の中央に粒子を集めるため、流路の幅は半波長(今回は750µm)とした。

実験では、プラスチック微粒子の懸濁液を流路に導入すると、音響収束によって微粒子が流路中央に集まった。流路の出口を3つに分岐させると、微粒子はほぼ全てが中央の流路へと流れ込み、残り2つの流路からはきれいな水が排出された。直径15μmのポリスチレン微粒子を流したところ、99%の粒子が中央の流路へ流れ込み、回収されることが確認できた。

さらに、洗濯排水に含まれる合成繊維くずを想定したナイロン6およびポリエチレンテレフタレート(PET)のファイバー(共に、直径10μm、長さ200μm程度)をこのデバイスに流し、その回収率を評価した。サイズが大きいため、沈んで流路底面に貼り付くものや、一部、流路の角に引っかかるものが見られ、回収率はともに95%程度となった。

研究チームによると、流路中央に集まる速度から推測して、このデバイスでは直径5μm程度のポリスチレン微粒子まで回収できる見込みだという。これは、従来の300μmメッシュより2桁小さい。3分岐のすべての流路に等しく流れるようにすると、マイクロプラスチックは3倍に濃縮されることになる。将来的には、この分岐を複数、連続して設けることで、より高濃度に濃縮することを目指すとしている。

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