紙なのに再利用可能な森のタンブラー
パナソニックとアサヒビールは2019年7月9日、ナノ~マイクロに微細化されたパルプ成分を55%以上含有する新開発樹脂「高濃度セルロースファイバー成形材料」を活用し、ビール用のカップ「森のタンブラー」を共同で開発したと発表した。高濃度セルロースファイバー成形材料はパナソニックが開発したもので、同社独自の金型/樹脂成形技術により、独特の風合いと強度を実現できるという。
森のタンブラーは、間伐材から作ったパルプが主原料なので紙製品だ。にもかかわらず、プラスチックよりも高い強度と140℃以上の高い耐熱性を持つため、繰り返しの使用が可能となる。使い捨てプラスチックの使用を減らすことを目的として、屋外におけるイベントや店頭での持ち帰り用のビール類の提供を想定して開発されている。
高い形状自由度とリユース可能な強度を備えるのみならず、画像や文字を自由にデザインできるため、各種イベントにおいてノベルティや記念品としての活用も期待できる。
森のタンブラーにビールを注ぐと泡がきめ細やか
また、森のタンブラーはカップ表面にセルロース繊維由来の細かな凹凸を施しており、ビール類の持続性のあるきめ細かな泡を作り出す。普通のプラスチックのカップにビールを注いだ場合、平均泡径は530μmだが、森のタンブラーにビールを注ぐと、平均泡径は120μmと非常に小さくなる。泡の粒が小さいということは、それだけ泡がきめ細かいということを意味している。
先述したように、材料として使われた高濃度セルロースファイバー成形材料は、間伐材などの木材から精製したパルプが主原料。そのため、森のタンブラーは自然由来の木の風合いを醸し出す。また、カップ成形時の温度条件によって色目が変化するため、6種類の中から希望の色目を選択できる。廃棄の際は、紙製品(可燃物)として分別可能だ。
2019年8月9日(金)からテスト展開を始める。
森のタンブラー、テスト展開の動向
アサヒビールは2019年10月4日〜6日の間、茨城県つくば市で開催された「つくばクラフトビアフェスト2019」で、4000個に及ぶ森のタンブラーを展開した。
そのデザインの良さとリユースできるという特性から、多くの利用者が容器を使い捨てずに持ち帰ったため、例年に比べて約2万個のプラスチックカップの削減に成功したという。
アサヒビールは今後も、プラスチックの使い捨てが当たり前だった音楽フェスやスポーツ観戦、野外イベントなどに、森のタンブラーの活用を広げ、プラスチックカップ使用量の削減を目指すとしている。
なお、森のタンブラーは「2019日本パッケージングコンテスト」で、「飲料包装部門賞」に輝いている。