宇宙で最も「クール」なレゴ――ABS樹脂製レゴを極低温で断熱材として使える可能性を発見

英ランカスター大学のDmitry Zmeev博士率いる研究チームは、世界中で人気を誇るおもちゃのレゴを可能な限り冷却し、絶対零度(マイナス273.15℃)に近い温度まで冷却して、その熱伝導率を測定したと発表した。これは宇宙で最も低温に冷やされたレゴだという。研究成果は、電子ジャーナル『Scientific Reports』において2019年12月23日付で発表されている。

具体的には、レゴ人形1体と4つ積み重ねたレゴブロック(型番3001)を希釈冷凍機に入れ、1.8 K(マイナス271.35℃)から70 mK(マイナス273.08℃)までの極低温に冷やすことに成功した。これは常温より20万倍も冷たく、宇宙よりも2000倍冷たい温度だ。希釈冷凍機で常温から極低温状態へ移行させ、その後、極低温から常温に戻す温度サイクルにもレゴ人形とレゴブロックは損傷することなく耐えたという。

この冷却実験で、研究チームは4つ積み重ねたレゴブロックの上下で温度を測定し、レゴブロックの熱伝導率が(8.7 ± 0.3) × 10^(−5)T^(1.75±0.02)WK^(−1)m^(−1)であることも割り出した。この低い熱伝導率は、積み重ねたレゴブロック間の固固界面結合による高抵抗に起因する可能性があると分析している。また、レゴブロックの素材そのものの強度も測定。レゴブロック(型番3001)は液圧プレスによる荷重300kgまで耐えたという。

実験を主導したZmeev博士は「レゴブロック同士を積み重ねるとレゴブロックが極低温で非常に優れた断熱材として機能することを発見できたので、実験結果は意義深いものでした。これは、希釈冷蔵庫など将来の科学機器の設計に利用する構成材料として非常に価値があります」と語る。

レゴは、MacorやVespelといった高価なセラミック材料に代わる安価な代替物となる可能性がある。現在、断熱材に使用されている素材の代わりに、将来、レゴのようなABS樹脂で作った構造物を利用すれば、作製費用が格段に安くなり、今後、多くの需要が見込まれる量子コンピュータの開発を促進することも期待できる。

研究チームは、次世代希釈冷凍機用の新しい断熱材を設計して3Dプリントで作製することも検討し始めているという。100平方センチメートル分のVespelシート1枚の価格で、ABS樹脂構造物をプリントする3Dプリンターのセットアップ費用をカバーできることから、今後の研究に注目が集まる。

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