- 2020-3-27
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- リチウムイオン二次電池, リチウムイオン二次電池材料, 一次電池材料, 富士経済
富士経済は2020年3月26日、リチウムイオン二次電池(LIB)材料の世界市場を調査し、その結果を発表した。それによると、2019年はコバルト価格の下落により微増にとどまったが、2023年には2018年比2.2倍の5兆7781億円となることが予測される。
今回の調査では、LIB材料12品目、アルカリ二次電池材料4品目、一次電池材料4品目、金属資源・出発原料3品目、計23品目の市場を調査、分析している。
LIB材料の2018年の世界市場は、LIBの需要が増加したことに加え、正極活物質の原料の一つであるコバルト価格が上昇したことから、2017年比で38.3%増の2兆5995億円となった。
2019年はLIBの需要が増加したが、コバルト価格が2017年のそれを下回る価格まで下落。正極活物質の実績が二桁近く縮小しており、市場は2018年比で2.0%増と微増にとどまることが見込まれる。今後、LIBの需要増加やxEV向けLIBの性能向上を目的とした高容量で高価格な材料の採用が増加することで、2023年は2018年比で2.2倍となる5兆7781億円となることが予測される。
エリア別のメーカー動向をみると、日本材料メーカーは日本LIBメーカー向け電池と北米EVメーカー向け電池での採用が多い。韓国材料メーカーは、韓国LIBメーカーが欧州自動車メーカーへ採用の働きかけを強化しており、今後の需要増加が期待される。
中国材料メーカーは、中国LIBメーカー向けが中心だが、供給過剰から中小メーカーが苦戦している。2019年は、中国自動車メーカーが補助金の大幅減額によって資金繰りが悪化し、影響を受けた電池メーカーもあり、厳しい環境下の材料メーカーも多い。
LIB材料の中で最も規模が大きい正極活物質は、コバルト価格の下落により、2019年は小型民生用LIBで採用されるコバルト酸リチウム(LCO)が2018年比で49.7%減少。正極活物質の市場は、2018年比で9.4%減が見込まれる。
今後、xEV向けで大幅な伸びが予想される三元系とハイニッケルは、三元系が2022年、ハイニッケルが2023年に1兆円を突破する見られ、正極活物質の市場は2023年に3兆1095億円となることが予測される。
中国ではハイニッケルの需要が急増しているが、xEVのコストダウンが必須となる状況にあり、高コストなハイニッケルから再び低コストなリン酸鉄リチウム(LFP)の採用が増えると見られる。他には、マンガン酸リチウム(LMO)は鉛蓄電池からLIBへの置き換え需要の増加が期待される。
主に炭素系物質が使用されている負極活物質は、黒鉛、ソフトカーポン、ハードカーポンなどのほか、シリコン系負極なども提案されている。 現状では黒鉛が多いが、シリコン系負極の採用機運が高まっており、現状は正極活物質にハイニッケル、負極活物質に黒船とシリコン系の混合が最も高容量化が図れると見られている。
さまざまな希少金属が使用されているLIB材料は、主な金属として、炭酸リチウム、水酸化リチウム、コバルト、ニッケルが挙げられる。主要金属は、LIBの需要増加により需要量の増加が予想されるが、他の主要金属と比較して価格が高いコバルトは、価格高騰の際の影響が大きく、使用量を減らす動きなどがあることから、需要量の伸びが比較的緩やかになると予想される。コバルト並みにエネルギー容量が高いニッケルは、コバルトの代わりに使用されており、大幅に需要量が伸びると見られる。
2019年の二次、一次電池材料の世界市場は、LIB材料の伸びが小幅なため、2018年比で1.9%増にとどまることが見込まれる。今後は、LIB材料がESS用L1Bの増加によって拡大をけん引し、2023年には2018年比2.1倍で6兆379億円になることが予測される。
ニッケル水素電池やニカド電池の材料として使用されているアルカリニ次電池材料は、ニッケル水素電池の需要がHVで旺盛なことから拡大が予想される。しかし、長期的にはHVもLIBへの移行が想定され、ニッケル水素電池の需要は限定的になっていく見通しだ。
アルカリニ次電池材料メーカーはLIB材料も展開しており、アルカリニ次電池材料の増産は生産効率化などによる対応が多いが、上位メーカーはすでにフル生産していることも珍しくないため、大幅なアルカリニ次電池材料市場の伸びは期待しにくい。
一次電池材料の2023年市場は、堅調な電池需要と二次電池材料としても使用される電解二酸化マンガンの需要が増加していることから、2018年比19.9%増の1624億円となることが予測される。
一次電池向けは、電解二酸化マンガンや亜鉛粉、アルカリマンガン乾電池用セパレータはアルカリマンガン乾電池の需要増加、金属リチウム箔はリチウム一次電池の需要増加により拡大していくと見られる。また、電解二酸化マンガンの伸びが予想される。