筑波大学は2020年4月3日、5Gの周波数(28GHz)の電磁波(マイクロ波)を用いて電子レンジの約500倍の出力(250kW)でロケットの推力生成に成功し、ワイヤレス給電効率を含めた総合推進効率を測定したと発表した。
マイクロ波ロケットは、化学燃料を用いない全く新しい推進システムだ。地上からワイヤレスでマイクロ波をロケットに送ることで、ロケット搭載燃料を理論上はほぼ0にするという。
これまでの研究で、効率的なロケットデザインやマイクロ波からの推力生成メカニズムについては明らかになりつつある。その一方で、ワイヤレス給電に関しての研究はまだ始まったばかりだ。特に大電力のマイクロ波を瞬時に計測する手法がなく、マイクロ波ロケットへのワイヤレス給電効率を直接的に計測することが困難だった。
実験では、500kW級ジャイロトロンを使用し、直径200nm×高さ600mm程度の円柱形の推進機にマイクロ波を照射。整流器とアンテナで構成されるレクテナ回路を用い、ロケット内部の大電力マイクロ波を計測し、ワイヤレス給電効率を求めた。
推進機の中心電力密度13.9MW/m2で推進機への投入電力は35.2kWだった。実験の結果から、900mmの送電距離で推進機と発信器の間の送受電効率は14%、コンセントから推進器までの効率は約6%であることが明らかになった。
研究では、ドローンをマイクロ波のワイヤレス給電だけで飛翔させる研究を進め、位置や姿勢を特定し、地上から1mの距離でマイクロ波を送ることにも成功。現時点ではマイクロ波の電力だけではドローンを飛翔できないが、送電距離や電力を増やし、ビームエネルギー推進技術の開発を進め、ロケット打ち上げのコスト削減に繋がる成果へとつなげていくとしている。