柔軟な構造の分散型波力発電装置が特許を取得――風に揺れる建物や自動車が走行する道路などからも発電できる可能性

Illustrations by Besiki Kazaishvili, NREL

米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)は、海洋などからクリーンエネルギーを生成する分散組み込み型エネルギー変換技術(Distributed Embedded Energy Converter Technologies:DEEC-Tec)を開発している。その技術を使用した、海洋再生可能エネルギー活用に特化したエネルギー変換器「Flexible Wave Energy Converter(FlexWEC)」が、2022年8月2日付で特許を付与された。FlexWECはさまざまな海洋環境からエネルギーを取り込むことができ、海や河川の波、潮流、潮の満ち引きからクリーンな電力を生成する装置だ。

従来の装置の多くは、海洋エネルギーを電気などのクリーンで再生可能なエネルギー源に変換するために、発電機を1つのみ使用する。また、波力発電装置では海洋の波力から守るために大きな鉄骨フレームを使うことが多いが、鉄骨フレームは高価で重いという問題があった。

それに対し、DEEC-Tecでは、複数のごく小さな変換器を寄せ集めて、しなやかに動く大きな1つのエネルギー変換器を形成する。この小さな変換器を組み合わせると、布地、隔壁、支持構造物などの基となる物を形づくることができ、DEEC-Tecベースのさまざまなエネルギー変換構造物を構築できる。

DEEC-TecベースのFlexWECは、収縮し膨張する風船や体をうねらせて動くヘビ、カヌーをこぐ際に使うパドルのような形状にすることができる。複数の小型エネルギー変換器を分散して組み込むことで、伸びたりねじれたり曲がったりするような構造の変形が可能で、海洋の波の動きからエネルギーを抽出できる。また、波力がFlexWECのどの部分にどのように作用しても、その構造全体で波力を利用可能なエネルギーに変換できる。

FlexWECは、回転型発電機や油圧ピストンシリンダーといった単独のエネルギー変換器や、ドライブシャフトやギアボックスなどの動力伝達システムに海洋の波力を集中させないので、波力が蓄積することで機器の停止や損傷が起きる可能性を回避できるという利点もある。

FlexWECの特長として、波力発電の中でも特に費用対効果が高いという点も重要だ。開花しつつある海洋エネルギー産業の最後の大きなハードルは、コストの高さだ。FlexWECは複数のエネルギー変換器を使用するためメンテナンスの回数が少なくてすみ、一部の変換器が修理を必要とする場合でも、その他の変換器は継続して作動する。また、より持続可能でコスト効率の高い材料で作ることができる点も強みだ。

DEEC-Tecは、最終的には、ほぼ全ての物理的な動きや動的な形状変化など日常のエネルギー源を、電気やその他の使用可能なエネルギーに変換できる可能性があるとしている。歩行中にスマートウォッチを充電する衣服、風に揺れて照明に電力を供給する建物、走行中の自動車による摩擦からエネルギーを取り出す道路といった、自然に起こるエネルギー源を活用する世界はもはやSFではなくなるのかもしれない。

関連リンク

Patented Wave Energy Technology Gets Its Sea Legs
Distributed Embedded Energy Converter Technologies

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