家庭でも多く用いられる弾粘塑性材料の新たな特性を発見――沖縄科学技術大学院大学とパトラ大学

沖縄科学技術大学院大学は2020年5月19日、同大学のマイクロ・バイオ・ナノ流体ユニットとギリシャ・パトラ大学の流体力学・レオロジー研究室との共同研究により、弾粘塑性材料に関する新たな知見が得られたと発表した。固体状態での同材料の弾性が、今後の同材料の流動モデルに含まれるべき重要な特性であることが示唆されている。

歯磨き粉、フェイスクリーム、ヘアジェル、マヨネーズ、ケチャップなど、弾粘塑性材料は家庭内でも多く用いられている。これらの材料は、静止状態では固体のようにふるまい、力が加えられると液体のような流動に変化する「降伏」と呼ばれる現象を示す。

従来の弾粘塑性材料の実験研究は、流体を挟んでずらした際に生じるせん断流下での材料のふるまいを測定するものであった。しかし、紡糸やプリント基板といった弾粘塑性材料の工業プロセスでは、流体が引き伸ばされる伸張流がより重要となる。純粋な伸張流を観察することは、実験流体力学において大きな課題であり、これまで弾性塑性材料の伸長流の測定が実験で成功したことはなかった。

今回、沖縄科学技術大学院大学 マイクロ・バイオ・ナノ流体ユニットのグループリーダーであるサイモン・ハワード博士は、弾粘塑性材料の伸長流を測定すべく「クロススロット・ジオメトリ」と呼ばれるマイクロ流体装置を用いた。

同装置は、4本の流路が互いに直角に繋がる構造となっている。弾粘塑性材料のプルロニック溶液を用いて、両側の2本のインバウンド流路に加圧すると、溶液が中心に向かって押され、別の2本の流路より押し出される。流動には中心部に速度がゼロになる点が発生する。これにより、2本のアウトバウンド流路内に流体が引き伸ばされる伸長流を生成することが可能となった。

この装置を用いて実験したところ、プルロニック溶液は弱い弾性効果しか示さないにもかかわらず、流動において単純な液体のようなふるまいとは異なる微小な非対称性が観察された。

また、パトラ大学ヤニス・ディマコポウロス教授(Professor Yannis Dimakopoulos)の研究チームは、プルロニック溶液およびカーボポールと呼ばれる2種類の弾粘塑性材料の流動に関する理論モデルを作成し、シミュレーションを行った。流動の中に液体に囲まれた固体領域が存在するといった複雑なパターンが発生することがシミュレーションによって示され、沖縄科学技術大学院大学の実験結果と一致した。

今回の研究により、降伏するまでの間にどの程度の変形量を維持できるかによって、弾粘塑性材料が既存の理論による予測に近いふるまいを示すか、それとも流動する弾性固体のようにふるまうかが定まることが明らかになった。材料の弾性を考慮するため、既存の理論を見直す必要があることが示唆される。

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