三菱マテリアルは2017年1月11日、低温で分解する有機分子でコーティングされた銀粒子を主成分とする焼結型接合材料を開発し、サンプル出荷を開始したと発表した。ハイブリッド自動車の高出力モーター電源制御用インバータなど、次世代型パワーモジュール用途に向けた接合材料だ。
次世代型パワーモジュールの普及が進む中、200℃以上の高温環境下でも動作可能な高温半導体素子の採用も進んでいる。高温半導体素子の接合材料としては、従来、界面活性剤などでコーティングされた銀粒子を主成分とする焼結型接合材料等が使われている。
しかし、200℃を超える高温での加熱工程を要し、周辺部材への悪影響の懸念があること、またボイド(接合層内に形成される10μmを超える空隙)が少ない接合層を形成するため加熱中に高い圧力を加える必要があることが問題点となっていた。
今回の新製品は、従来品と同等の20MPa以上の接合強度、200℃以上の耐熱性を維持しながら、従来品の問題点を解決したもの。新しいコーティング銀粒子を覆う有機分子が加熱により二酸化炭素などに分解し、銀粒子間の焼結反応を促進するため、導電性接着剤並みの加熱条件(150℃以上60分)での焼結が可能で、加圧工程も不要となる。また、ニーズの高い小型(10mm角以下)の高温半導体素子において、従来品よりボイドが少ない接合層を形成できる。
同社では、高い耐熱性と信頼性が求められる次世代パワーモジュール向けの焼結型接合材料としての利用のほか、高い熱伝導率を必要とするLEDチップなど高発熱素子への応用も期待されるとしている。