MIT、不足する人工呼吸器をより安全に共用する方法を提案

Image courtesy of the researchers

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う人工呼吸器不足に対処すべく、1台の人工呼吸器を2人以上の患者で使えるようにするため、人工呼吸器の管(チューブ)を分岐させるというアイデアを巡って盛んに議論されている。2020年3月下旬に、ニューヨーク市では少なくとも1つの病院が、T字型コネクターを使って複数の患者間で人工呼吸器を共用し始めたという。

しかし、この方法では各患者に適切な量の空気を送り込むことが保証できず、リスクを伴うとして複数の医師会がそのような使い方に反対であることを表明している。例えば、1人の患者の病状が改善すると、その患者の肺はより「伸縮」するようになり、より多くの空気を吸い込むので、人工呼吸器を共用している他の患者に送り込まれるはずの空気を奪ってしまう。あるいは、1人の患者の肺が虚脱し縮んだ状態になった場合、過剰な空気が急激に他の患者のほうに流れ込んで肺に損傷を与えてしまう可能性がある。

マサチューセッツ工科大学(MIT)とブリガム・アンド・ウィメンズ病院(BWH)の研究チームは、患者が生命の危機に瀕している緊急時の最終手段としてのみ使用すべきとしながらも、このような課題を克服して安全に人工呼吸器を共有する新しい方法「iSAVE」を考案し、その詳細を医学誌『Science Translational Medicine』で発表した。

チームが考案した方法は、患者ごとに1つずつ、枝分かれした管にフローバルブを組み込むというもの。これにより、各患者に合わせて空気の流量を制御できる。このシステムには、1人の患者の肺に過剰な空気が入り込むのを防ぐ圧力解放弁や、患者の吸気量が変化したときに作動するアラームなどの安全対策も含まれている。

研究者らは、肺の機能をシミュレートする人工肺や豚を使って、1台の人工呼吸器で患者2人に対し必要な空気流を維持でき、一方の患者の肺が虚脱した場合、もう一方の患者のほうへ流入する恐れのある余分な圧力を、圧力弁が自動的に解放することを実証した。

研究者らは、BWHやマサチューセッツ総合病院のパンデミック対応チームと協力し、必要に応じてこの方法を展開している。また、iSAVEのセットアップ方法と適切な部品の入手方法に関する解説を専用ウェブサイトで掲載している。

ただし、この研究論文の筆頭著者であるShriya Srinivasan博士研究員は「指摘されていた安全性とパーソナライズについての懸念に関していえば、このシステムでは改善されていることは間違いない。しかし、切迫した必要性がない限り、勧められない」と述べている。

研究者らは、新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行している間、この方法を患者に臨時で使用できるよう、米国食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可(EUA)の承認を得るために取り組んでいる。

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