- 2020-7-27
- 技術ニュース, 電気・電子系
- JST, NICT, カラーフィルタアレイ, マルチカラーホログラム, 千葉大学, 情報通信研究機構, 桐蔭横浜大学, 波長依存性位相変調素子アレイ, 瞬間カラーホログラフィックセンシングシステム, 研究, 科学技術振興機構, 計算コヒーレント多重方式
情報通信研究機構(NICT)、科学技術振興機構(JST)、桐蔭横浜大学、千葉大学の研究グループは2020年7月22日、自然な光を用いる瞬間カラーホログラフィックセンシングシステムを開発したと発表した。同システムを用いれば、1回の撮影で複数種類/多数の蛍光体を同時にホログラムとして記録できるカラー3次元顕微鏡が実現するという。
自然な光のカラーホログラムセンシングは、カラーフィルタアレイや多数回の記録が必要で、明瞭なホログラムの取得のほか、記録時間を短縮する原理の創出が課題となっていた。そのため、色で分子組成が標識された複数種類/多数の蛍光体を同時に1回の撮影で、明るいホログラムとして記録できる3次元顕微鏡は実現できずにいた。
研究グループは今回、ホログラフィの原理を用いて多次元情報を多重記録する技術の一つで、計算機内のコヒーレント多重を利用する方式(以下、計算コヒーレント多重方式)を採用。これにより、カラーフィルタアレイが不要で、1回の撮影で一般照明光や発光体をマルチカラーのホログラムとしてセンシングできるシステムを開発した。本システムは、専用のモノクロイメージセンサーを試作して搭載したことで実現。本開発により、色で分子組成が標識された複数種類/多数の蛍光体の瞬間のカラー多重ホログラフィック3次元顕微鏡センシングが実証された。
試作イメージセンサーでは、波長情報の記録のためにカラーフィルタの色吸収を用いず、波長依存性位相変調素子アレイを使用。計算コヒーレント多重方式に必要な色ごとに異なる光波のリズム(位相)変化を与えることで、カラー情報と明るいホログラムの取得を両立した。1回のホログラム画像撮影で測定できるため、ホログラフィック多重を用いるカラー多重3次元蛍光顕微鏡と比べ、測定回数を250分の1以下に抑えられる。
現在の光学システムは画像の画素数が少ないなどの課題があるが、NICTは今後、光学システムを改良し、記録の高速化、多数の動く微小物体の同時3次元動画像観察、より小さな物体の高画質観察などに発展させるという。それにより、自然光など弱い光に適用できるマルチカラー3次元動画像顕微鏡としての活用のほか、動的な生命現象の観察/発見や科学材料を分析する装置への発展を目指すとしている。