毛髪から有機LED用カーボンナノ発光材料を作る手法を開発

人間の毛髪を使って、柔軟な発光デバイスを製作する元となる高発光カーボンナノ材料に変える手法が開発された。クイーンズランド工科大学がグリフィス大学と共同で行ったもので、研究成果は2020年1月27日、『Advanced Materials』に掲載された。

廃棄物を有益な材料に変えることは重要だ。そして人間の毛髪は、発光粒子を得るために重要な要素である炭素と窒素の天然源にもなる。毛髪は、ケラチンを含むタンパク質(アミノ酸のポリマー)から成り、加熱することで分解する。加熱後に残った材料は、その分子構造に炭素と窒素の両方が組み込まれているため、良好な電子特性が得られる。

今回研究チームは理髪店の協力を得て、散髪で出る細い毛髪を、100万分の1mmの小さく均一なドット、カーボンナノドットへと変える手法を開発した。カーボンナノドットを生成するため、毛髪を分解し、その後240℃で燃やすという2段階のプロセスを開発した。処理されたナノドットはポリマーに均等に分散され、次に自己集合して「ナノアイランド」というナノドットの小さなグループを形成した。

これらを有機発光ダイオード(OLED)デバイスの活性層として使用し、デバイスにペンシルバッテリー2〜3個程度の電圧を印加すると、デバイスは青色に光った。

これはテレビ画面で使用できるほどには明るくなかったが、ウェアラブルデバイスからスマートパッケージまで、さまざまな柔軟な画面で使用できる可能性がある。例えば、サインやスマートバンドなどの小型光源や、毒性がないことから医療デバイスにも使用できる可能性がある。IoTデバイス用の、小型で安価、柔軟なOLEDディスプレイには多くの需要が見込まれる。

また、このカーボンドットはクロロホルムの存在に高い感度と選択性で反応するため、水処理システムのクロロホルムレベルのリアルタイム監視用のセンサーの開発に使用することも可能だ。クロロホルムは、水の消毒に塩素を使用する場合の副産物の1つで、世界保健機関(WHO)は、飲用水に含まれるクロロホルムの安全制限を300ppb未満に設定している。

研究チームは、このようにディスプレイとセンシングの両方で潜在的な用途がある有益な材料を、人間の毛髪から作成することは、循環経済と持続可能な材料技術につながるとし、廃棄されている羊毛や犬の毛などからも同様に柔軟なOLEDを製造できるか検討している。

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