- 2020-8-18
- 化学・素材系, 技術ニュース
- JST, レーザー溶融噴射, 富山大学, 担持触媒, 物質・材料研究機構, 研究, 科学技術振興機構, 自己触媒機能付き金属触媒反応器, 金属3Dプリント
科学技術振興機構(JST)は2020年8月14日、富山大学および物質・材料研究機構が共同で、金属3Dプリント技術を活用した「自己触媒機能付き金属触媒反応器」を作製したと発表した。JSTによると、金属3Dプリンターなどを用いた高温/高圧下でも使用できる同反応器の作製は世界初となる。
石油や化学、薬品合成工業では、高温/高圧型大型プラントによる大量生産が一般的な製造プロセスだ。巨大な金属反応管内に大量の触媒粒子が充填された大型触媒反応器がその心臓部となる。このようなプラントでは、設備投資額が莫大になり、反応に必要な触媒のコストも大きくなる。またエネルギー消費量が大きかったり、広大な敷地が必要なために洋上や車上への設置ができないという課題もあった。
今回の開発では、化学プラントの触媒には金属成分が多いことに着目。金属の複雑な立体造形ができる「金属3Dプリント技術」を活用して自己触媒機能付き金属触媒反応管を作製した。レーザー溶融噴射とコンピュータープログラムを併用して、ステンレスや金属、合金を原料に、スパイナル構造やモノリス構造などのさまざまな空間構造を持った3D金属反応管を作製した。これに化学処理や酸化/還元処理を施すことで、内部の微細金属表面に触媒活性点を作り出すことに成功した。
作製した金属反応管は内表面がそのまま触媒となるため、従来のような担持触媒を別途充填する必要がなくなる。これにより反応器自体が小型化され、設備投資や触媒コスト低減につながるという。また、従来は難しかった洋上や車上、船舶上での生産にも展開可能だ。
同反応器を使い、二酸化炭素の水素化からの液化炭化水素燃料合成や、メタンと二酸化炭素の改質反応などの高温/高圧条件下における高い活性と長期間の触媒寿命を実証した。
今回開発した反応器は、製薬やバイオ反応までの広い範囲での展開が期待できるという。例えば海底メタンハイドレートを使って洋上生産する合成液体燃料プラントへの応用などが考えられる。また、二酸化炭素またはバイオマスからの液体燃料や化学品への合成反応設備の小型化および低コスト化も実現するという。
今回の研究開発はJSTの未来社会創造事業、探索加速型「地球規模課題である低炭素社会の実現」領域の研究開発課題、「二酸化炭素からの新しいGas-to-Liquid触媒技術」の一環として行われた。