- 2020-9-3
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ノースカロライナ州立大学の研究チームは、マイクロRNA(miRNA)の一種であるmiR-218-5pが発毛を促す可能性があることを発見した。研究成果は、『Science Advances』誌に2020年7月24日付で公開されている。
現在、抜け毛治療に関してはいくつかの医学的応用が進んではいるものの、毛髪再生のためにできることはまだほとんどない。今回の研究成果は、禿げていても毛包は消失しているのではなく、血流の減少により縮小しているだけだという近年の研究に基づいている。つまり、毛髪の成長を促進し毛周期を調節している毛乳頭(DP)細胞を補充すれば、毛乳頭が回復し再び髪の毛が生え始める可能性があるということだ。
研究チームは、2次元培養DP細胞、3次元スフェロイド培養DP細胞、脱毛治療薬ミノキシジルでそれぞれ処理した場合の発毛再生について、マウスモデルで調べた。その結果、ケラチンを足場とした3次元スフェロイド培養DP細胞で処理したマウスは、わずか15日で90%の毛髪を取り戻した。スフェロイドとは細胞環境を模倣した3次元構造のことで、ケラチンの足場がアンカーとなり必要な場所にDP細胞を維持することで、効果的に機能したと考えられる。
次に、DP細胞が毛包成長のプロセスをどのように制御しているかを検討するために、エクソソームmiRNAを調べた。その結果、miR-218-5pを増加させると毛包の成長が促進する一方で、阻害すると毛包の働きが停止することを発見した。
研究チームは、miRNAが非侵襲的な薄毛治療のための薬剤に利用できる可能性があると考えており、現在miRNAを利用して発毛を促進する研究を進めている。
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