テキサスA&M大学の研究チームが、電気化学特性に優れ、製造コストの低いフレキシブルなスーパーキャパシタを開発した。従来のスーパーキャパシタの約900倍の比容量(電荷を貯蔵する能力)を持つとともに、植物由来で環境にも優しい。近い将来、電気自動車を数分で充電できるようになるなど、エネルギー貯蔵デバイスとして活用されると期待される。研究成果が、『Energy Storage』誌の2020年6月号に公開されている。
一般的なエネルギー貯蔵デバイスは、バッテリーあるいは数10mF以上の静電容量を持つスーパーキャパシタの何れかの形式によるものだ。バッテリーは単位体積あたり大容量の電気を貯蔵できるものの、デバイスを充電するのに比較的長時間を要する。一方でスーパーキャパシタは、あまり大容量の電気を貯蔵することはできないが、短時間に大きな電流を発生できるため、デバイスを急速充電するのに有効だ。
スーパーキャパシタの電極は、表面電荷量を増大するために、電気二重層の表面積を拡大する活性炭を用い、バインダーを使って成形されている。このため、電極加工コストが高いという問題があり、その活用は小型デバイスの電源やメモリのバックアップ電源などに留まっている。
今回研究チームは、優れた電気化学性能を有する、低コストで製作可能なスーパーキャパシタの開発にチャレンジした。特に、表面積を拡大する電極材料として、二酸化マンガンMnO2のナノ粒子に着目した。更に、MnO2ナノ粒子を電極に成形するバインダーとして、木質繊維を束ねて接着する機能がある天然の高分子リグニンを用いた。「MnO2は、安価で資源的に豊富であり、電極を作るのに良く使われる遷移金属系酸化物と比較して環境安全性が高い。また、過去の研究により、リグニンを金属酸化物と一緒に用いると、電極の電気化学特性を向上する例が知られている」と、機械工学科のHong Liang教授は語る。
研究チームは、汎用過マンガン酸カリウムとリグニンから水熱合成法を用いて、リグニンとMnO2ナノ粒子の混合物を生成。次に混合物をアルミ板に被覆して電極を成形した。その電極間にゲル電解質を挟み込んでスーパーキャパシタを組み立てたところ、非常に優れた電気化学的特性を安定的に発揮できることが判った。40mA/gの電流条件で得られる比容量は379mF/cm2であり、これまでのスーパーキャパシタの最大900倍にも達する。その上、数千回の充放電サイクル後でも殆んど変化しないことが判った。「このスーパーキャパシタは電気化学的に優れるだけでなく、植物由来で環境に優しく、非常に軽量で柔軟性に富み、また容易かつ安全に低コストで製作できる。近い将来、電気自動車を数分で充電できるなど、フレキシブルなエネルギー貯蔵デバイスとして活用される」と、研究チームは期待している。
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