3Dプリント手法により2種類の鋼を積層造形するバイメタル製造方法を考案

ワシントン州立大学(WSU)の研究チームが、2本の溶接トーチを用いた3Dプリント手法により、円筒形状の同一レイヤーの外側と内側に異なる2種類の鋼を積層し、さまざまな機能を発揮できる高強度バイメタルを作製する手法を考案した。実証実験として、内側が高耐食性のステンレス鋼で、外側が安価な軟鋼で構成されるバイメタル二重管を作製し、接合界面が健全に維持され、数cm以上の長さに造形でき、冷却後の残留熱応力によって各材料単独よりも高い圧縮強度を示すことを確認した。自動車や医療用インプラント、航空宇宙などの分野の高機能部品を製造する上で、新しい設計の考え方と製造手法を提供できると期待している。研究成果が、2023年6月22日に『Nature Communications』誌に公開されている。

3Dプリンティングの手法や応用が急速に拡大する中で、3Dプリントによる積層造形でバイメタル材料を作製することが検討されてきたが、これまでは、界面が単一平面状のバイメタルに限定されてきた。WSUの研究チームは、自然界からヒントを得て、樹木や骨の内部構造において異なる材料の層状リングが形成され、その結果高い強度とさまざまな機能を発揮していることに着目した。このような構造をバイメタルで実現することを考え、2種類の金属を3Dプリンティング技法によって円筒状に積層造形する手法を考案した。

研究チームは、自動車工場やマシンショップにある溶接トーチを2台用い、CNCと組み合わせた3Dプリンティング技法によって、バイメタル二重管を作製した。2種類の金属として、腐食環境に曝される内側には耐腐食性ステンレス鋼を、剛性の必要な外側ケースには橋や鉄道で用いられる安価な軟鋼を用いた。積層造形プロセスにおいては、軟鋼用トーチが外側ケースを円形に積層した後、直ちにステンレス鋼用トーチが同一レイヤーにおいてケース内側を積層する。これを連続的に繰り返すことにより、二重管の長手方向に数cm以上、積層造形させた。

最終的には、内面ドリル加工と外面研削によって、高精度の寸法を持つ高耐食性バイメタル二重管を製作することに成功した。熱膨張率の異なる2つの金属は、冷却過程において異なる割合で収縮するため、残留熱応力として高い圧縮強度を生成し、内管および外管の間に強い締め付け力が働く。その結果、ステンレス鋼または軟鋼単独の場合よりも、33〜42%ほど高い圧縮強度が得られることを確認した。

「既に普遍的で比較的安価に実現できる3Dプリント手法を用いるので、製造業や修理工場において、バイメタルでトルク抵抗の高い車軸や、コスト効率の高い高性能ブレーキローターなど、高強度でカスタマイズされた鋼製部品を迅速に製作できる可能性がある。更に、外側に耐久性のあるチタンを用い、内側に治癒効能のある磁性鋼を用いた人工関節や、冷却性能のある内側材料の周囲に耐熱性材料を用いることにより、適切な温度を維持できる宇宙空間構造などを開発できる」と、研究チームは期待している。また、2つの材料に留まらずに、多数の材料を用いた高機能複合管も可能と考えている。

関連情報

New 3D‑printing method builds structures with two metals – WSU Insider
Radial bimetallic structures via wire arc directed energy deposition-based additive manufacturing | Nature Communications

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