14cmのカーボンナノチューブフォレストの成長に成功――CNTの新用途や低コスト化に寄与 早稲田大学と静岡大学

早稲田大学は2020年10月21日、同大学理工学術院総合研究所と静岡大学工学部電子物質科学科の共同研究チームが、14cmのカーボンナノチューブ(以下、CNT)フォレストの成長に成功したと発表した。CNTの新用途の可能性や、大量生産による低コスト化などに寄与することが期待される。

CNTは成長中の触媒の構造が変化するため、成長速度の速さと成長寿命の長さの両立が難しいことがCNTフォレスト長尺化への課題となっていた。これまで1本のCNTを50cm程度に成長させる手法は報告されていたものの、CNTの数密度が10万倍以上となるCNTフォレストの成長は最長で2cm程度に留まっていた。

同研究チームは今回、ガス中に鉄およびアルミニウムの原料を微量添加して触媒の構造変化を遅くし、26時間で14cmのCNTフォレストの成長に成功した。冒頭の左の画像が成長中のCNTの様子で、右が32時間成長後のCNTフォレストの写真となっている。

微量添加にあたっては、CNTを成長させる通常のCVD法において、鉄の原料として有機金属のフェロセンを、アルミニウムの原料としてアルミニウムイソプロポキシドを極微量を室温にて供給する手法を開発した。近年開発されたガドリニウム添加触媒(Fe/Gd/Al2Ox)と同手法を組み合わせることで、CNTフォレストの成長速度の速さと成長寿命の長さを両立させている。

ガス中に鉄とアルミニウム原料を入れた場合と入れない場合のCNTフォレストの成長曲線の比較

今回、従来多く利用されているホットウォール型のCVD装置ではなく、独自開発したコールドガスCVD法を採用した。CNT上に堆積する不純物を最小限に留めることで、純度の高いCNTの成長が可能となっている。

実験結果により、鉄触媒が下地に拡散してなくなる現象を鉄原料が防ぎ、アルミニウム原料が触媒の横方向の構造変化を抑制していることが推測される。これらの原料を供給しなかった場合は約1時間で成長が止まってしまうのに対し、供給した場合は26時間程度成長が持続した。

また、電気特性評価の結果、この長尺CNTの密度は銅の1/7と軽量でありながら、銅とほぼ同程度の大きな許容電流密度を有することがわかった。

今回の触媒構造の変化におけるメカニズムはまだはっきりと判明しておらず、今後の解明による手法の改良やさらなる長尺化に向けての実験条件の探索、最適化などが課題となる。今後のさらなる触媒や成長手法の開発を経て、より実用的な成長手法の確立が期待される。

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