- 2020-11-18
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- n型トランジスタ, n型有機半導体, バンド伝導性, ホール移動度, 有機IoTデバイス, 有機エレクトロニクス, 東京大学, 産業技術総合研究所, 研究, 筑波大学, 電界効果移動度
東京大学と筑波大学、産業技術総合研究所の共同研究グループは2020年11月17日、印刷可能でバンド伝導性を示すn型有機半導体単結晶を用いて、メガヘルツ帯で動作する高速n型トランジスタを開発したと発表した。
軽量で機械的柔軟性を有し、印刷にも適合する有機半導体は、次世代の有機エレクトロニクス材料として期待されている。移動度が低いことが課題となっていたが、近年は有機半導体でも無機半導体のようにバンド伝導性を示すものが開発されており、10cm2V-1s-1以上の高移動度を実現している。ただし、このような有機半導体はほとんどがp型であり、n型の開発が求められていた。
同研究グループは以前、移動度が高くて大気安定性や熱ストレス耐性を有する、印刷法に適したn型有機半導体材料「PhC2−BQQDI」を開発している。今回は印刷法を用いて同材料の単結晶薄膜を成膜し、トランジスタを作製することで、低温での温度可変ホール効果測定に成功した。
電界効果移動度とホール移動度が広い温度範囲で一致していることから、同薄膜が理想的なバンド伝導を示すことが明らかになっている。気相法により作製されたn型有機半導体単結晶では、従来よりホール効果測定がなされていたものの、p型ではこれまで測定例がなかった。
さらに同研究グループは、印刷後に微細加工した有機単結晶薄膜を用いて、大気下で短波帯の4.3MHzで動作するn型有機トランジスタを実際に開発した。冒頭の画像が、作製された短チャネル有機トランジスタの顕微鏡像である。
作製にあたっては、単結晶薄膜の大面積での印刷に適したな連続エッジキャスト法やフォトリソグラフィを使用できることが判明したため、今後の大規模集積への拡張性も有望視される。
印刷技術を含めたデバイス製造技術が今後向上することで、さらなる高周波数帯での動作も見込まれる。同研究グループは、単結晶p型有機トランジスタと組み合わせることによる相補型有機デバイスの応用研究も進めており、有機IoTデバイスの開発に寄与することが期待される。