東レは2021年1月21日、しなやかでタフな新規ポリマー材料を創出し、本格的なサンプルワークの開始を2021年度から目指すと発表した。開発したポリマー材料では、ポリアミド6(以下、PA6樹脂)が持つ高い耐熱性、剛性、強度を維持しつつ、繰り返し折り曲げ疲労耐久性をこれまでの15倍まで高めている。
PA6樹脂は、優れた耐熱性、剛性、強度を持つエンジニアリングプラスチックで、材料の寿命に関連する疲労耐久性を付与する際に柔軟なエラストマーを配合する。しかし、疲労耐久性を向上させると耐熱性、剛性、強度が低下するため、PA6樹脂の特性を維持しながら高い疲労耐久性を持つ新規材料を開発することが課題になっていた。
そこで東レは、外力が加わった際に可動できる構造を持つポリマーとして、分子結合部がスライドするポリロタキサンに着目。PA6樹脂中にポリロタキサンを均質に微分散化し、PA6樹脂の特性と疲労耐久性の両立を目指した。
開発では、独自のナノテクノロジーのナノアロイによる精密アロイ制御技術を駆使し、PA6樹脂中にポリロタキサンを最大限の効果発現が期待できるPA6結晶構造サイズの数10nmに微分散化することに成功。このしなやかな応力分散機構により、新規ポリマー材料を創出したという。開発品は、外力を受けた際、PA6樹脂の結晶構造変化が抑えられることを高輝度放射光X線(SPring-8)による試験で確認している。
東レは今後、自動車、家電製品、スポーツ用品など疲労耐久性が必要な用途へこのポリマー材料を展開しながら、繰り返し折り曲げが要求される部材などの新規用途開拓を推進していくという。