- 2021-1-27
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- エピタキシャル成長, 全固体電池, 固体電解質, 放射光X線回折測定, 日本工業大学, 東京工業大学, 東北大学, 産業技術総合研究所, 界面不純物制御, 研究, 電極/電解質界面, 電池容量
東京工業大学は2021年1月26日、同大学物質理工学院応用化学系と東北大学、産業技術総合研究所、日本工業大学の共同研究グループが、全固体電池の界面不純物制御による電池容量の倍増に成功したと発表した。
安全性やエネルギー密度、充放電の速度などに優位性を有する全固体電池は、電気自動車などでの次世代電池として期待されている。現在は4V程度の発生電圧を有するLiCoO2系の電極材料が広く用いられているが、5V程度とさらに高い電圧を発生する電極材料LiNi0.5Mn1.5O4を用いた高出力型全固体電池が注目されている。
同研究グループは今回、エピタキシャル成長したLiNi0.5Mn1.5O4薄膜を形成し、その上にLi3PO4固体電解質を成膜、負極としてLiを蒸着することで、不純物を含まない清浄な電極/電解質界面を有する全固体電池を作製した。結果として、Li2Ni0.5Mn1.5O4を放電状態、Li0Ni0.5Mn1.5O4を充電状態として、50回の安定した充放電動作に成功した。
同電池は4.7Vと2.8Vで動作し、容量は従来のLiNi0.5Mn1.5O4を用いた電池の2倍に達している。
一方で、電極/電解質界面に不純物を混入させて対照実験を行ったところ、充放電動作は全く観測できなかった。これにより、不純物を含まない清浄な界面の実現が電池の高容量化に重要であることが判明した。
さらに、LiNi0.5Mn1.5O4のエピタキシャル薄膜を作成した後にLi3PO4固体電解質を堆積させたところ、リチウムイオンが自発的にLi3PO4からLiNi0.5Mn1.5O4に移動した。
また、放射光X線回折測定により結晶構造を調べたところ、LiNi0.5Mn1.5O4薄膜の界面近くでLi2Ni0.5Mn1.5O4が不均一に形成されることも判明した。
リチウム電極を固体電解質の上に堆積させて電池を作製したところ、さらにリチウムイオンの自発的移動が起こり、LiNi0.5Mn1.5O4エピタキシャル薄膜がLi2Ni0.5Mn1.5O4エピタキシャル薄膜へと完全に変化した。不純物を含まない清浄な界面を形成したことで、リチウムイオンが固体電解質側からスムーズにLiNi0.5Mn1.5O4側に移動したものとみられる。
なお、冒頭の画像の左側は充放電動作中の電池の状態、右側は充電状態を示している。
清浄な電極/電解質界面は、これまでにも低界面抵抗や高速充放電に寄与することが明らかになっている。今回新たに電池容量の倍増を達成したことで、全固体電池の実用化に向けてのさらなる一歩となることが期待される。