高校生が学びたい学問を発見するためのサポートサイト「夢ナビ」で、大阪大学工学部の伊藤雄一准教授による「無意識コンピューティング」のミニ講義が新たに紹介されている。無意識下での情報や行動を取得して解析する技術を組み合わせ、ユーザーが知らぬ間にコンピューターの恩恵を受ける環境を作り出す研究だ。
まず研究事例として、人の感情を取り込む柔らかい風船型デバイス、圧力データを解析して学習の理解度を推定するペン型デバイスなどの入力デバイスを紹介。続いて、光ファイバーの毛に覆われ「思わず撫でたくなる」ディスプレイ、情報が結露として浮き上がる「情報に触れたくなる」ディスプレイなど、無意識の行動変容を誘発するデバイスが紹介される。
さらに、非侵襲で非装着のデバイスの1つとして、座面センサーを取り付けた「椅子型デバイス」が紹介されている。座面を支えるセンサーが座面にかかる重量と重心値をリアルタイムに測定して、座った時の重量や重心値などの癖で個人を識別できる。測定したデータを学習することで、突っ伏す、伸びをする、頬杖をつく、キーボードを叩くなどの状態もわかるようになる。この識別により「疲れている、眠くなっている」などの状態を読み取り、休憩を促すなど健康管理に役立てることができる。
この椅子を複数使った応用や展開も考えられている。例えば、場が盛り上がるとそこにいる人の行動が似てくるという「同調傾向」を示すことが心理学的な知見からわかっているが、この傾向を着座時の揺動から得たデータの周波数解析により検出する研究も進めている。さらに同意や非同意、うなずきを検出できるようになれば、グループのコミュニケーションの状況を把握したり、会議が有意義だったかどうかを評価するなどに利用できるという。