- 2021-3-21
- キャリアニュース, 制御・IT系, 海外ニュース
- eNeuro, fMRI(磁気共鳴機能画像法), IT, IT人材需給に関する調査, Javaコード, サーチライト解析, ファインチューニング, プログラミング, 奈良先端科学技術大学院大学, 経済産業省
2019年4月に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には日本で45万人のIT人材が不足するかもしれないという。小学校では2020年からプログラミング教育が必修になるなど、プログラミング人材の育成に対する重要性は年々増し、関心も高まっている。
プログラミング上級者と初心者の違いは、どこにあるのだろうか。プログラミングは人類史において比較的新しい活動で、成果はもちろん、知識を構造化したり重要だと認識するポイントがそのレベルによって違うことは既に報告されている。しかし、脳のどこでこうした違いが発生しているのかは、まだ分かっていないという。
奈良先端科学技術大学院大学の研究チームは、コンピュータプログラムを理解する能力について、個人の習熟度の高さと関連する活動が脳内の複数の領域で見られることを明らかにした。研究結果は、2020年12月14日付けの『eNeuro』に掲載されている。
研究チームは、30名のプログラマーを初級、中級、上級の3つのグループに分け、72種類の短いJavaコードを読んで4つの機能カテゴリに正しく分類するという課題を与えた。そして、被験者がコードを読解している時の脳活動を、fMRI(磁気共鳴機能画像法)で可視化した。さらに、サーチライト解析とよばれる手法を使って、脳領域の情報量を分析した。
その結果、上級者ほど分類分けの正答率が高く、前頭葉/頭頂葉/側頭葉にわたる7つの脳領域における読み取り精度は正答率と相関があることが判明したという。これらの領域は、自然言語処理や個人的な記憶の検索、刺激に注意が向く機能に関連している。つまり、能力の高いプログラマーほど、プログラムの内容を的確に捉えられるように脳領域がファインチューニングされ、活動パターンが洗練されている可能性を示唆している。
上級プログラマーの脳活動の特性を特定することは、プログラム理解能力の背後にある認知メカニズムを理解するよいきっかけになるだろう。研究チームは、さらに視線や心拍などの活動とも組み合わせることで、プログラミング能力の理解を深め、高いプログラミング能力の獲得につながる要素を探したいと考えている。そして、得られた知見を活かして、小学生から社会人まで幅広い年齢層を対象とする効果的なプログラミング学習法や、IT人材の育成につなげたいとしている。