- 2021-5-13
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- 3Dプリント, Abdulghani Mohamed, Advanced Manufacturing Precinct, AIAA Scitech 2021 Forum, XROTOR, オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO), デルフト工科大学, プロペラ, ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT), 学術, 米国航空宇宙学会(AIAA), 翼通過周波数(Blade Passing Frequency:BPF)
従来より静かなプロペラを設計する新しい手法が発表された。豪ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)、蘭デルフト工科大学、オーストラリアのメルボルンを拠点とする航空宇宙会社XROTORの共同研究によるもので、その詳細は、米国航空宇宙学会(AIAA)発行の「AIAA Scitech 2021 Forum」プロシーディングに2021年1月4日付で掲載された。
先進的エアモビリティやドローンから出るローター騒音を人間が知覚する主な要因として、翼通過周波数(Blade Passing Frequency:BPF)が騒音の高周波数(広帯域)成分をどのように変化させているかという点が挙げられる。人間の耳は他の周波数よりも特定の周波数に敏感であり、音に対する知覚は加齢とともに変化する。音に対する人間の知覚を考慮に入れて設計することで、不快感の少ないプロペラを設計できると考えられる。
そこで、研究チームは、プロペラブレードが発する騒音をさまざまに操作して、人間の耳による知覚にどのような変化があるかを調べた。まず、機械学習を活用してプロペラを設計。研究チームはアルゴリズムに基づいてさまざまなプロペラを作製し、その中から有望な複数のプロトタイプをRMITの研究施設Advanced Manufacturing Precinctで3Dプリントした。
この3Dプリント製のプロトタイプを用いて、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の特殊な無響室で実験的音響試験を行った結果、プロトタイプが出す騒音は、市販のプロペラよりも約15dB低減していた。これは、研究チームの設計手法の正当性を立証するものだ。また、今回の設計によるプロペラは、人間の耳に聞こえる音がかなり小さくなっただけでなく、同じスロットル信号を入力して標準市場のプロペラと比較した場合、より高い推進力を発揮することが分かったという。
RMITの航空宇宙エンジニアで研究チームリーダーであるAbdulghani Mohamed博士は、プロペラを設計するために開発した数値アルゴリズムと、人間の耳で騒音はどのように知覚されているかについての考察という、試験の一環として行われた2つの重要な新機軸によって、このような素晴らしい結果を得られたとしている。
開発したアルゴリズムを使用してさまざまなプロペラ設計を繰り返すことで、推力、トルク、音響指向性などのさまざまな基準に合わせて最適化することができた。また、人間の耳がどのように音を知覚するかを含む新しい基準の定式化も行ったとMohamed博士は述べ、将来、この新基準を設計に活用することを提案している。
設計を最適化するというこの手法は、ドローンに使用される小さなプロペラから、乗客を運ぶように設計された将来の都市型エアモビリティ車両(エアタクシー)に使用される大型プロペラまで応用できる可能性がある。