- 2021-7-17
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- Beniamin Zahiri, John Cook, Nature Materials, Paul Braun, Xerion Advanced Battery, イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校, カソードの結晶学, モルフォロジー, 全固体二次電池, 学術
米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームは、全固体二次電池の性能と寿命の向上につながる研究結果を発表した。電極-電解質界面の原子配列と電池性能の相関を直接評価し、界面積の最小化がカギだとしている。詳細は、2021年5月21日付けの『Nature Materials』に掲載されている。
現在、発火や燃焼といった技術的問題を解決し、エネルギー密度の向上や長寿命化も期待できるとして、固体材料を電解質に使った全固体電池の開発が進んでいる。二次電池の寿命には電解質の安定性が大きく関わることから、多くの研究機関が最も安定性のある固体電解質材料をいち早く見つけようと奮闘している。しかし、その過程において「開発者は、電解質と電極の間にある非常に薄い界面で起きていることの重要性を幾分見落としている」と、Beniamin Zahiriポスドク研究員は指摘する。
電池では、材料だけでなく、その表面における原子配置も重要となる。現在、固体電池の電極は表面に多様な原子配列を持つ材料で構成している。そのため、電極と固体電解質が接する界面は無限の可能性を秘めているようにも見える。「我々はどの配置が、電池寿命、エネルギー密度、出力の実用的な改善につながるか見つけることに興味を持っている」と、Zahiri氏は続ける。
研究チームは、カソードの結晶学とモルフォロジーが固体電池の長期的な性能に与える影響を直接評価した。特別な原子配列を持ったリチウムベースのカソードとナトリウムベースのカソードを作製し、固体電解質と組み合わせたところ、どちらの固体電池の場合も、セルの性能と界面の原子配列には相関があることが分かった。界面の不安定性を理解し、セル性能を上げるには、カソードの原子配列を制御し、界面の表面積を最小化することがカギだとしている。また、エネルギー密度を上げるために、高密度で厚いカソードを使用することも提案している。
「今回の結果は、今日手に入る重要な固体電解質すべてを評価する方法に対する新しいパラダイムだ。これまでは主に、どういった電極と固体電解質の界面構造がベストパフォーマンスを発揮するかをただ推測していた。しかし、今はテストして材料と原子配向の最適な組み合わせを知ることができる」と、共同研究者で電池メーカーXerion Advanced BatteryのディレクターであるJohn Cook氏は語る。
材料の界面特性を正確に測定する方法を提案できたことで、より良い電解質材料の開発につながると、研究チームを率いるPaul Braun教授も期待を寄せている。