セラミック粒子による太陽エネルギー貯蔵システム

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)が、落下するセラミック粒子を使って、最大15時間エネルギーを貯蔵できる集光型太陽熱(Concentrated Solar Thermal:CST)技術を開発した。同技術は、太陽が照っていないときでも信頼性の高い再生可能な電源を提供できる。同研究成果は、2023年10月10〜13日にシドニーで開催された、SolarPACES 2023年大会で発表された。

CST技術では、鏡を使って太陽光を集めて熱に変換し、蓄えた熱を発電などに利用できる。CSTは、古くから研究されており、放物面鏡を使用したものから溶融塩を充填したタワー型システムまで多岐にわたる。しかしCSTに従来から使用されていた熱伝導流体は、400~600℃しか扱えず、蓄熱温度に制限があった。

研究チームは、耐熱温度が1000℃以上のセラミック粒子を使用し、803℃の蓄熱温度を達成した。0.5mm以下の黒いセラミック粒子は、タワー最上部から落とされ、集められた太陽光を吸収しながら加熱され、熱として10〜15時間蓄えられる。太陽光や風力の出力が低いときや夜間でも、必要なときにいつでも電力供給が可能となる。

同手法は、鋼鉄管に頼る従来手法と異なり、粒子が自由に落下するため、鋼鉄の熱の限界を避けることができる。しかし、粒子の落下速度が速すぎると、粒子が散らばって効率が低下してしまうという問題があった。そこで、粒子が短い距離を落下した後、トラフに着地して速度を落とし、次のトラフに落下させる「キャッチ・アンド・リリース」方式を採用した。

現在、CSIROの実験システムでは400枚のミラーを備えており、本番では1万枚以上の大型ミラーを使用する必要がある。完成すれば、100MWの石炭火力発電所と同等の発電が可能となる。一般的な石炭火力発電所では、540℃で作動する蒸気タービンを使用している。今回のCST技術でも、同様にタービンを使って発電でき、工業プロセスで使用される熱エネルギーのプロセス熱にも利用可能だ。

太陽光発電は太陽が照っているときに電力を供給するのに対し、CSTは太陽からエネルギーを受け取って貯蔵し、夜間や曇りの日にエネルギーを使用できるため、太陽光発電と競合しない。

研究チームは、多大なインフラ支援があれば、同技術が2050年までに、遠隔地におけるオーストラリアの発電とプロセス熱需要の最大40%を占める可能性があるとしている。

関連情報

Could falling particles of solar energy help us reach net zero? – CSIRO

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