東北大学や東京大学などは2016年7月26日、大記憶容量と高速性能および低消費電力を併せ持つことで次世代のメモリとして期待される不揮発性抵抗メモリ(MRAM)の大容量化などに貢献する、新たな記憶素子を開発したと発表した。
MRAMは、トンネル磁気抵抗(TMR)素子と呼ばれる記憶素子内の磁気の方向によって情報を記憶するが、大容量化などの高性能化のためには、磁化方向の安定化や書き込み時に磁化を反転させるための電力の省力化が課題であった。
今回の研究では、垂直方向に磁化の高い安定性(垂直磁気異方性)を持ち、磁化反転時の抵抗が少ないマンガン系合金ナノ薄膜(垂直磁化マンガンガリウムナノ薄膜)からTMR素子を作製することに成功した。
現在小容量のMRAMはサンプル出荷されているが、より大容量化のためにはTMR記憶素子のサイズを小さくする必要がある。現在ギガビットクラス容量を実現できるMRAM用のTMR記憶素子の直径はおおよそ20~30nmだが、今回開発されたナノ薄膜によって、直径10nmクラスのTMR素子が可能になるという。
今後はさらに実用に資する素子を開発し、ギガビットを超える記憶容量を持つスピン注入書き込み(STT)-MRAMの実用化や、スピン軌道書き込み(SOT)を用いた超高速SOT-MRAM、電圧書き込み(VC)を用いた超低消費電力VC-MRAMなど、最先端の書き込み技術を用いたMRAMの開発にも取り組むという。
本研究は、内閣府 総合科学技術イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の研究開発プログラムの一環として実施されたものだ。