- 2021-8-18
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- 3次元階層構造, Journal of Membrane Science, WHO, エレクトロスピニング法, シリカエアロゲル, ナノファイバー膜, 学術, 海水, 淡水, 超疎水性, 韓国建設技術研究院(KICT), 飲料水
WHOによると、世界で7億8500万人以上の人が清潔な飲料水を入手できていないという。人間の生活に必要な淡水は地球上の全水量の2.5%に過ぎず、地球表面の70%以上を覆っている海水は利用できないのが現状だ。
研究者たちは、これまでにも海水を淡水化する効率的な手法を模索してきた。今回、韓国建設技術研究院(KICT)の研究チームは、わずか数分で海水から99.9%の塩分を除去する方法を開発し、1か月間の連続運転に成功した。研究成果は、『Journal of Membrane Science』誌に2021年4月1日付で公開されている。
研究チームが開発したのは、膜蒸留法による淡水化装置で利用するナノファイバー膜だ。膜蒸留法は、水蒸気の凝縮作用に疎水性膜を利用する方法で、海水淡水化の手法としては一般的なものだ。疎水性膜の片面側は高温に保たれ、海水中の水が水蒸気となり膜を通って反対側に移動する。反対側は低温のため、水蒸気は凝縮し液体の水が得られる。塩分は蒸発できないので、高温側に残ったままだ。ただし、疎水性膜が乾いた状態でなければ塩分が低温側に大量に移動してしまうため、長期的な運転のためには濡れた膜を定期的に交換する必要がある。
今回研究チームが開発したナノファイバー膜は、エレクトロスピニング法により作製した。3次元階層構造を持ち、超疎水性を示す。さらに、膜にシリカエアロゲルを添加して膜を通過する水蒸気の流れを良くすることで、淡水化にかかる時間を短縮した。開発したナノファイバー膜を1か月間連続使用したところ、膜は濡れることなく99.9%の塩分を除去した。
研究チームは、エレクトロスピニング法は汎用性の高い手法であり、開発したナノファイバー膜は膜蒸留法による長期間の脱塩への応用に期待できるとしている。