- 2021-9-15
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Chilla Malla Reddy, Science, インド工科大学(IIT), インド科学教育研究大学(IISER), スマートフォン, 学術, 有機圧電材料, 有機結晶材料, 自己修復材料
インド科学教育研究大学(IISER)とインド工科大学(IIT)の研究チームは、独自の内部分子構造を持つ有機結晶材料を合成し、損傷を受けても自律的に修復することを確認した。透明で従来の自己修復材料より硬いこの材料により、将来的には傷がついても1秒以内に元に戻るスマートフォン画面が実現するかもしれない。研究成果は『Science』誌に、2021年7月16日付で公開されている。
30年以上前から自己修復材料の開発は研究されており、建築、自動車、航空宇宙産業において耐摩耗性を目的とした工学的応用がすでに始まっている。しかし、これまでに知られている自己修復材料のほとんどは、柔らかく、非結晶構造をとり、不透明で、自己修復のために熱や光、薬品など外部刺激を必要とし、スマートフォンの画面など電子機器への応用には適していない。
今回研究チームは、機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する有機圧電材料を用いて、長さ2mm、幅0.2mm以下の針状結晶の自己修復材料を合成した。合成した自己修復材料は、結晶が破壊されると分離した2つの面が逆の電荷を帯びて互いを引き寄せ合い、外部刺激を必要とせず自己修復する。針を使って亀裂を生じさせる実験では、針を抜いてから数ミリ秒間で自然に亀裂が元に戻る様子が確認できた。
研究を主導したIISERのChilla Malla Reddy教授によると、今回開発した材料は従来の自己修復材料と比べて10倍も硬く、電子機器や光学機器の用途に適した整然とした結晶構造を持つという。
現段階では実験室レベルの結晶合成だが、研究チームは今回の発見はスマートフォンなど日常的なデバイスへの応用に期待できるとしている。