- 2021-10-13
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Fuzhong Zhang, Nature Communications, セントルイス・ワシントン大学, ソフトロボット, タンパク質, チチン, 人工繊維, 合成繊維ケブラー, 微生物, 超高分子ポリマー
セントルイス・ワシントン大学の研究チームは、微生物を利用して人工的にタンパク質を合成する手法を考案した。優れた機械的特性と持続可能性を備えた人工繊維として、丈夫な靴ひもやベルト、生体適合性の高い縫合糸など、さまざまな用途へ展開できる。研究結果は、2021年8月30日付けの『Nature Communications』に掲載されている。
研究チームは、筋繊維を構成する主要なタンパク質の1つ「チチン」に着目した。筋繊維は、ソフトロボットでも注目されている素材だ。チームは、筋肉に似た特性をもつ材料を開発するのではなく、人工筋肉を直接作ることにした。「しかし、動物から筋肉を集めるつもりはない。微生物を使う」と、Fuzhong Zhang教授は語る。
通常、微生物はチチンのような大きなタンパク質を生成できないとされる。研究チームは微生物を人工的に改変して、平均的な微生物タンパク質の約50倍、約2メガダルトンという超高分子ポリマーを生成できるようにし、最終的に直径10μmの繊維を作った。
新しい繊維は、優れた強靭性、強度、減衰特性を備えており、綿、絹、ナイロン、さらには防弾チョッキにも使われる合成繊維ケブラーよりも強いと分かった。生体適合性も高く、縫合糸や再生医療にも適している。動物を傷つけることなく、量産化も可能で、製造コストも安くできると研究チームは考えている。
関連リンク
Synthetic biology enables microbes to build synthetic muscle