宇宙塵探査実証衛星「ASTERISC」の打ち上げ、初期運用開始に成功――大面積ダストセンサーを搭載 千葉工業大学

(左)膜型ダストセンサー展開前の衛星外観。前面のオレンジ色の膜が8×8cmの膜型ダストセンサー。(右)展開後の衛星外観。

千葉工業大学は2021年11月22日、同大学惑星探査研究センターの超小型衛星2号機となる宇宙塵探査実証衛星「ASTERISC」(アスタリスク)の打ち上げ、軌道投入、および初期運用開始に成功したと発表した。

同衛星は、軌道上の宇宙塵と微小スペースデブリを観測することを目的とする3Uキューブサット(10cm各のユニットで構成される超小型衛星)だ。独自開発した膜状の粒子観測装置(ダストセンサー)を搭載。その膜にぶつかった宇宙塵と微小なスペースデブリ(宇宙ごみ)を観測するのが目的だ。

宇宙塵などの粒子は数が少ないために、軌道上で直接観測するのが困難だ。そのためできるだけ検出面積の大きなダストセンサーを用いることが必要になる。従来方式のセンサーを大型化することはコストの面での課題が大きいため、同大学では容易に大面積化が可能な膜状のダストセンサーシステムを独自開発した。

同システムでは、ポリイミド製の膜に圧電素子を装着。粒子が膜に衝突する際に発生する弾性波を電気信号で捉える。これに独自の信号処理を施すことでリアルタイムに粒子を観測できる。膜の面積を大きくするだけで大面積なセンサーを実現でき、同大学によると世界初の方式となる。

同衛星は2021年11月9日9時55分、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のイプシロン5号機によって打ち上げられた後、正常に軌道投入。同日夜に地上との交信に成功し、全搭載機器の起動にも成功した。現在各機器の動作を確認する初期運用を行っており、その後展開型の膜型ダストセンサー(30×30cm)を展開(冒頭の右画像を参照)して、本格的な観測ミッションを開始する予定だ。

同大学では、今回の観測によって宇宙塵の性質を調査することで、最終的には惑星の進化や生命の起源に宇宙塵がどうかかわったのかを明らかにしたいと考えている。また、現在実態が不明な微小スペースデブリの観測によって、宇宙環境問題への貢献も期待している。

今回、将来のミッションを視野に入れた国産の衛星バス技術の起動実証も実施する。

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