- 2022-2-8
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- イットリア安定化ジルコニア, セラミックス, ナノインデンテーション測定, 名古屋大学, 弾性率, 東京大学, 柔軟, 物質・材料研究機構, 異種材料接合, 研究, 粘弾性変形, 通電処理, 金属, 音速測定
東京大学は2022年2月7日、セラミックスに通電処理することで、硬度を維持しながら弾性率が低下して柔軟になる性質を発見したと発表した。
今回の発見は、物質・材料研究機構および名古屋大学との共同研究によるものだ。セラミックスは電子機器部品や産業用部品に幅広く活用されている。セラミックスは硬度や耐熱性、耐食性に優れる反面、塑性変形をほとんど起こさないために脆い性質も持つ。この脆さをカバーするために金属などとの異種材料部品と接合して使われる場合があるが、その場合に接合部が温度変化に曝されると熱膨張率の違いから生じるひずみによって、セラミックスが破壊してしまうという問題があった。
近年セラミックスに電気を流すと焼結や超塑性変形が高速化するという現象が発生することが注目されており、同大学ではその性質を利用した新しい材料機能の発現を目的として研究を進めた。
今回、緻密質なイットリア安定化ジルコニア試料に対して、炉内温度600℃、電流密度400mA/mm²で10分間通電処理し、音速測定とナノインデンテーション測定によって材料の力学特性を評価。その結果、試料にゆっくりと力を加えた場合のみ弾性率が最大約30%低下して柔軟になり、硬度には変化がないことを発見した。このようにゆっくりと力を加えた際に柔軟になる性質は、高分子などで見られる粘弾性変形に近い特性だ。そのような高分子の持つ特性を、硬度を維持しながらセラミックスに付与できたことになる。
今回の発見によって、セラミックスと金属との異種材料接合時の耐久性向上など、セラミックス部品の信頼性向上につながることが期待されるという。