3Dプリンターを活用し、安く耐久性の高い人工衛星向けセンサーを作製

Figure courtesy of the researchers and edited by MIT News

MITの研究チームは、3Dプリンターで人工衛星向けのセンサーを作製した。天気予報や気候監視用のプラズマセンサーを、従来よりも安く短期間で製造できるほか、将来の宇宙用電子機器を大きく改善する可能性がある。研究結果は、『Additive Manufacturing』に掲載されている。

逆電位アナライザー(RPA)としても知られるプラズマセンサーは、1959年に初めて宇宙ミッションで使用された。センサーは、細かな穴が点在する複数のグリッドとコレクタで構成され、プラズマが印加されたグリッドを通過すると、電子やほかの粒子を除去し、イオンだけを捕集する。これにより、大気の化学組成やイオンエネルギー分布の測定、解析ができる。

最先端のプラズマセンサーは、シリコンなどを用いた半導体ベースのデバイスで、クリーンルーム内で何週間もかけて作製するため、時間とコストがかかる。

そこで研究チームは3Dプリント技術を利用して、従来のプラズマセンサーと同等の性能ながら、数日間で数十ドルで製造できる方法を開発した。「3Dプリンティングでは、一部の性能を諦める必要があると思う人もいる。しかし、我々の研究によれば、それは必ずしも正しくない」と、Luis Fernando Velásquez-García主任研究員は説明する。

センサーが正しく機能するためには、グリッドを収めるハウジング部分が重要となる。ハウジングは絶縁性だけでなく、突発的で急激な温度変化への耐性も必要だ。研究チームは、20世紀に開発されアールデコ調の建物にもよく見られるガラスセラミック材料「Vitrolite」に着目した。半導体センサーに使用するポリマー材料が400℃で溶け始めるのに対し、Vitroliteは800℃の高温でも割れず、優れた耐久性を発揮できる。

Vitroliteは3Dプリント材料としても使えるため、DLP方式の液槽光重合(VPP)を利用して、積層ピッチ100μmで、複雑な形状ながら、細孔がなく滑らかな部品を作製した。また、グリッドにはレーザーカットを利用し、4種類のセンサーを試作した。例えば、ある試作品は、人工衛星が直面するであろう、さまざまなプラズマを効果的に捕らえて計測できることを確認した。高精度の半導体デバイスで計測するような、高密度で低温のプラズマに適したセンサーも作った。

金属部分にも3Dプリンターを使い、センサー全体を積層造形法で作れば、宇宙空間での製造も見込める。Velásquez-García氏は今後、レイヤー厚やピクセルサイズを縮小することで、より複雑で高精度のハードウェアを作りたいとしている。さらに、軽量化と堅牢性を両立させるため、人工知能の活用も考えている。

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